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このような企画型の造船業を中小型船の領域で形成するのは容易でなかろうが、造船所、設計事務所等が互いに強いところを積極的に相互利用しあうネットワーク型の共同をするとか、知識集約型企業の創設をするとか、グローバル化に対応できる能力の形成が課題となる。

他方、建造能力においても、大中型船の場合、造船業の施設化を積極的に推進したところが競争力を強化するという趨勢にあると指摘されているが、中小型船の場合の対応策についても検討が必要になる。すでに中国地区等ではこれに対する有効な提案が成されており、その具体化を奨励する施策が望まれる。中小造船業の場合、企業自らの技術力が十分でないために、たとえば造船業改革のモデルを検討し、提案するとか、その実用化の試みには支援をする等が必要となる。

このような造船業の構造的改革に上記の「造船業基盤整備事業協会による設備買い上げ」や「中小企業近代化促進法による構造改善」の制度が活用できる。また、次に紹介するような技術の普及も構造改善を促すものとなる。

(4) モジュール型造船技術の推進

中国地区では機関室を要素システムをモジュール化して制作するという方法を開発したが、このような、部品からのアセンブリーをモジュール化を介して行うという考えは自動車工業でもごく最近に取り入れられ始めている。内航船に有効な建造方法として普及を推進したい。

(5) 内航船標準化の検討と建造協業化の促進

小型船の分野で造船業の施設化を推進しようとすると、内航船の標準化や建造の協業化などが検討課題になる。こうした条件の形成が、高度の建造施設設備導入の基盤になると理解される。

(6) 設備と技術の海外移転の促進

日本では過剰な設備である場合も、アジア諸国では貴重な設備である。新造船は国の産業として選択的であるが、特に修繕船業は輸送インフラの直接的なサポート基盤として不可欠である。国際協力は過剰設備解消に一つの方法と理解されるが、中古設備は援助等の対象にならないとの制約があるとも開く。しかし、このように設備は耐用年数も長く、その有効活用は省資源時代の援助の課題と考えられ、このような制度の実現を期待したい。

 

2.3 内航船の近代化・高度化によりリプレースを促進する措置

現実に国内輸送の半ばを内航海運が担っているのであるから、多数の内航船が稼働しており、もし、これらの既存船を遥かに越える効率やサービスの質が提供できる新造船が期待できれば、リプレースによる需要創出が可能になる。このためには以下のような視点が必要になる。

(1) 内航海運の将来像、革新目標の明確化

船腹調整制度を廃止し、より競争的な条件の下で内航海運の革新を図ること自体は理解されるところであるが、それでは日本の内航海運をどのような方向に革新するか、革新を担う船はいかなる近代化船か等、内航海連の将来像、革新目標の明確化が必要になる。現実にはほとんど明確な指針やビジョンが無いから、船価が安いうちに建造しようにも建造すべき船が明確でないことになる。

 

 

 

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