2. 中小造船業に対する対策
今日、建造船が皆無に近いまでに至っている事態から、緊急避難的な措置が必要と考える。同時に、内航海運、造船業が構造的に抱えている問題が今日の苦境には深く関係しているところから、それらの解決を目指す方向での改革とそれを促す措置が必要と理解される。本委員会で検討した対策を以下に説明し、他に考えられる方策を含めて、総合的な中小造船業共への支援をお願いしたい。
2.1 緊急避難的措置
年間に300隻以上が建造されていた内航船の発注が本年は10%とかの極めて僅かしか見込めないという状態では、まず仕事の確保が最重要で、続いて雇用対策や融資が必要になる。
(1) 需要の創出
造船業が自らの努力で受注を行うのは当然だが、今日の状況では政策的に可能な需要の創出を行うべきで、以下のような需要創出が期待される。
・ 官公庁船の代替促進
・ 大中造船業からのブロック工事等の斡旋
・ 公共工事における鋼構造物工事の斡旋
(2) 雇用の安定
事態の深刻さを考慮して雇用の安定のために次の施策をお願いしたい。
・ 特定雇用調整業種、あるいは特定不況業種への指定
(3) 融資制度の活用
不況下で折からの信用不安による貸し渋りが現実に生じており、次のような制度のより積極的な活用をお願いしたい。
・ 信用保証制度の幅広い活用
・ 運輸施設整備事業団融資の近代化船建造に対する優先的適用
2.2 中小造船業の構造転換を促す措置
内航船、あるいは漁船の建造を主としている造船所の明確な過剰設備の解消にはすでに存在している制度が活用できる。しかし、今後長期にわたって内航船を革新できる造船業を作り出すことを目指して構造転換を進める必要がある。
(1) 造船業基盤整備事業協会による設備買い上げ
この制度を転業の促進、過剰設備の解消に積極的に活用したい。
(2) 中小企業近代化促進法による構造改善
長期にわたり中小型船舶需要に対応できる造船業を創り出して行くためには、その再構築の促進が必要になる。この制度等の積極的な活用を考えることが必要になる。
(3) 内航造船業の近代化
内航海運の必要とする船腹の供給能力を持つことが必要で、そのような企業体質と技術力の育成が必要になる。このためには船主の企画を待つのではなくて技術力を持つものとして物流の要請を理解して積極的に対応を提案できるような造船業が必要になる。