3. 中国地区の中小造船・舶用工業の将来像
現在、わが国は社会・経済システムが大きな変革を遂げつつある時期にある。造船・舶用工業を取り巻く環境も大きく変化しており、各事業者はかつてないほど先行きの見通しが難しい中での事業運営を余儀なくされている。
こうした中、変革に伴う短期的な痛みも避け得ない状況にあるが、これまで中国地区において築き上げてきた造船・舶用工業の技術・人材を将来にわたって維持・発展させていくためには、行政の適切な支援のもと、造船能力の調整と集約化を進めることによって、現在の供給力過剰状態から脱し、産業集積全体が疲弊してしまうのを回避することが前提条件となる。
その結果、現在の状況を的確に把握し、厳しい現状への正しい認識と改善意欲を持った事業所が事業を継続していくことを想定した上で、前節で挙げた課題を踏まえ、21世紀において実現すべき中国地区の中小造船・舶用工業の将来像を設定する。そして、中長期的な視野に立ちながら将来像実現に向けての取り組みを実行することによって、中国地区の中小造船・舶用工業が今後もわが国の社会・経済において一定の役割を果たしていくことを目指すものである。
なお、これらの将来像の実現を目指すに当たって、人材の確保・育成をはじめとした経営資源の強化、経営体質の改善は、これらを支える基盤的方策として必要不可欠であり、将来像実現に向けた方策と並行して取り組みを進めることが重要である。
以上のことを踏まえ、「将来像実現の前提となる方策 ─造船能力の調整と集約化─」「中小造船・舶用工業の将来像」及び「将来像実現を支えるための方策 ─経営資源の強化、経営体質の改善─」をそれぞれ設定し、その実現化を図っていくものである。