III. 主な船舶需要産業の動向
造船業にとって、海運業は最もつながりの深い顧客であり、貨物船やタンカーなどの建造量は、海運市場の動向に大きく左右される。また、旅客船、漁船、特殊作業船などの建造量は、それぞれ旅客輸送業や漁業、建設業などにおける船舶需要の影響が大きい。
一方、中国地区では、瀬戸内側の造船所で貨物船をはじめとした内航船建造のウェイトが高く、山陰側の造船所では漁業とのつながりが深いといった特徴が見られる。従って、本章では、主要な船舶需要産業として、海運業(特に内航海運)及び漁業の動向について分析を行った。
1. 海運業の動向
(1) 世界の海運の動向
1980年代以降、先進国において活発化した東アジア諸国への生産拠点の立地は、東アジア発着の海上物流を増加させ、1980年代前半からの一貫した荷動き量の増加をもたらしている。
しかし、1997年に入って、タイ、インドネシア、韓国で連鎖的に発生した通貨・経済危機は、こうしたアジア経済の成長基盤の脆弱さを露呈させた。また、今後の本格回復も容易ではないと見られていることなどから、世界の海上荷動きは一つの転換期に入ったものと考えられる。