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6] アウトソーシング型の産業

船舶に搭載するエンジン、艤装品、係船・荷役機械、航海用機器などの舶用製品については、ほとんど全て舶用機器メーカーから購入されているほか、船舶の設計、船体ブロックの製造、艤装工事、塗装工事、配管工事などについても、状況に応じて協力会社や他の造船所に適宜外注されており、他の組立型産業と比べても、アウトソーシング型産業・総合組立型産業としての性格を強く持っている。

7] 海岸・川岸沿いの立地制約

船舶という製造する製品の性格上、造船所の立地は必然的に海岸や川岸など海につながる水際に限られる。加えて、造船所の仕事は依然として屋外の作業が多いため、雨や雪が多い地域には向いていない。

また、海岸・川岸沿いの立地制約から、他産業に比べて事業所の移転・集約に関する制約が大きい。近年はウォーターフロントでの自然保護、景観問題などが高まっており、一部では工業的な利用への抵抗も強まっている。その一方で、交通利便性の低い沿岸部や島嶼部などの造船所では、他の土地利用への転換もままならず、いずれにしても立地面からの柔軟な事業展開は難しい状況にある。

8] 中小造船業における困難な事業多角化

造船業では、企業規模によって事業多角化の進展度は大きく異なってる。大手造船各社はプラント、産業機械、エネルギー関連機器、環境関連機器など陸上機械部門への事業多角化を積極的に推進しており、売上高に占める造船部門の比率は大手7社平均で11%程度にまで低下している。また中手造船所でも、大手と比べるとなお造船部門の比率は高いものの、鉄構部門などへの多角化を志向している。一方、小規模造船所の多くは依然造船専業の色彩が強く、企業規模の小さい造船所での事業多角化の困難さを示している。

(参考)日本興業銀行「IBJ わが国の造船業の現状と展望」(1997年3月)

 

(2) 世界の造船業の分布

世界の造船業は、日本がおよそ4割、韓国が3割と極めて高いシェアを有している。日本(特に瀬戸内、九州)、韓国、及び中国の大連、上海を結ぶ造船トライアングルは、世界の船舶の7割近くを生産する「世界の造船センター」を形成している。

 

世界の船の7割近くを生産する造船トライアングル

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(資料)野村証券金融研究所「財界観測 世界の造船メーカー:国際競争力の分析」(1997年12月)

 

 

 

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