(2) 港湾の問題
1] 河川港の問題
長江上中流域においては渇水期・増水期間に大きな水位差が発生する。この水位差は運航手段である船舶も大きな制限を受けるが、貨物の積み下ろし部分である「港湾機能」にとっても大きな制約要因である。
例えばクレーンやバースといった恒久的港湾機能を渇水期の水位レベルで設置すると、増水期には水没してしまうため、港湾としての使用が不可能である。したがって、港湾は増水期の水位レベルを想定して建設せざるを得ないが、その場合、渇水期は港湾施設のはるかに下方の水位レベルに本船が離着桟することになる。
したがって、水位差が大きい長江中上流域の場合、固定的な港湾施設を設けることはできない。そのため、武漢より上流の地域においては「逆上がり方式」と呼べる独特の荷役方式を採用している。
この方式は、
・ 増水期を想定し、水位の高いレベルにクレーン(ガントリークレーンでなくジブクレーン)を設置する。
・ 河川部分にフローティングバースを設ける。
・ 河岸の斜面にそって、トロッコが移動(自走でなくワイヤーにより斜面を上下する)できるようにし、クレーンとフローティングバースを結ぶ。
・ 貨物はトロッコに積載され、本船とクレーン間を移動する。
ものであり、水位差に関係なく荷役を可能とする方式である。
しかし、この方式は
・ フローティングクレーンとジブクレーン部分の2回の荷役が必要であること。
・ トロッコがコンテナ(TEU)1本分の積載能力しかないこと。
から、荷役に時間を要し非効率である。
この荷役効率の悪さも、長江水運が長時間を要することの大きな要因となっている。