第二章 長江水運
1. 長江水運の意義
長江は中国内陸の青梅省に源を発し上海に至る、国土の中央を縦貫する6,300kmの大河である。しかし、重慶より上流は渓谷や山奥の渓流となるため、輸送ルートとしての役割はきわめて少ない。
従って、輸送ルートとしての長江は重慶─上海間の約2400kmが対象となる。この流域の本流、支流を合わせた流域面積は中国全体の3%、人口は17%程度であるが、GNPは20%を占める地域であり、その流域に重慶、武漢、黄石、南京、常州、南通、上海と中国のなかでも経済力のある都市が存在している。
中国も長江流域を特に重視し、開発潜在力が最も大きな地域としており、この地域の開発発展がなければ中国の近代化達成は不可能な地域と想定している。そのため、92年には流域の沿岸地域の28都市と8地区の開発開放が決定された。
また、重慶近辺は中国の重工業のなかでも、自動車製造の大拠点であり、すでに日系自動車メーカーと二輪メーカー2社づつ稼働している。
このような発展性に富む地域を縦貫する長江は、古来より水運輸送が行われていた。しかし、このサービスレベルがどのようなものかは、この地域のビジネス関係者にとって大きな関心事である。
日系企業にとっても、長江の下流に位置する上海は華南地区とともにもっとも進出の多くみられた地域であり、繊維工業等の軽工業が長江流域の内陸部に新拠点を設けたり、沿海部から拠点をシフトするケースがみられるようになっており、長江水運の利用可能性は輸送モード選択の多様性を確保する上で、大きな課題である。