第一章 調査の目的
中国とわが国の経済関係は中国の改革・開放政策が開始された1978年頃から日本企業の中国進出が活発化したことにより本格化したといえる。80年代は日系企業の中国進出が加速し、天安門事件により一時的には減速したものの、ほぼ一貫して進出企業数は増加傾向にある。このような企業活動の活発化を受け日中貿易額も増加傾向を持続している。現在ではわが国の貿易相手国として、中国は米国に次ぎ第二位の地位を揺るぎないものとしている。
このような両国間の経済活動の発展は、必然的に二国間物流を飛躍的に増加させており、キャリヤやフォワーダーを始めとする物流企業にとっても中国は大きなマーケットとなっている。
日系フォワーダーは近年、荷主企業が特にアジア地区への海外展開や生産力のシフト傾向を強めたことに伴ない、海外進出企業に追随し現地の物流もサポートするケースが増えつつある。中国についても例外ではなく、中国国内の物流に対する荷主企業を始めとする各方面からの要請も強くなっている。
JIFFAではすでに平成7年にフォワーディング委員会にて「日本・中国間の貨物流動の特性及びフォワーディング事業のあり方に関する調査」として中国の物流事情調査を実施している。この調査で中国物流の現状、問題点を把握しフォワーダーの果たす役割について考察した。当該調査時点は、日系企業の沿海部への進出が盛んな時期であり、物流の問題認識は沿海部を対象としたものが主であった。
しかし、現在その調査時点からわずか3年を経たに過ぎないが、中国を巡る物流環境は大きく変化した。その最大の要因は、中国がその開発方針を沿海重視から内陸重視へと転換することを明らかにしたことにある。この方針は96年の全国人民代表者会議において決定され、80〜90年代にかけて外国資本の沿海部進出に講じられた優遇措置は、今後沿海部には適用されず内陸部への進出に対して適用されるのが原則となった。中短期には揺り戻しがあることが十分ありえようが、今後中国は内陸部の開発を大きく推進していくことになる。
このような中国の内陸発展への転換は、物流においても内陸へのアクセスをいかに確保するかという新たな課題を生じさせている。一般的に中国における内陸を対象とした物流は、インフラの未整備等を要因に高品質のサービスが提供されにくいと認識されている。
そこで、本年度の調査対象として中国の内陸輸送事情を取り上げることとした。内容は各輸送モードの状況を把握することに加え、調査の具体性を保つため、今後中国の内陸部で最も発展可能性が大きいと考えられる南京、武漢、重慶、成都への沿海部からのアクセス状況の把握を試みた。また前回調査から3年を経ているので、通関事情、フォワーダー参入規制の最新状況を把握することも合わせて行うこととした。