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(FIG-20)

それから、先程の温度変曲点、3100mの温度変曲点より深い所は、見掛け上は、伝導的な温度パターンを取っています。しかし、そこを掘削している最中には、3100mより深い所を掘削している最中には、しばしば、CO2、H2Sといった非凝縮性のガスが沸き出してまいりました。それと同時に、これは3708mの深度の所で、清水を逆循環させまして、底の熱水を取ろうと努力した結果でありますが、その結果、捕えられたこの流体は、Nacl換算にして39ウェイトパーセントも塩濃度を持ったブラインである事が分りました。それには、色んな重金属が溶け込んでいる事も、鉄、マンガン、銅はどういう訳か少なかったのですが、亜鉛とか、色んな金属が多量に含まれている事が判明しております。つまり、熱水対流系より下では沸騰が起って二相ゾーンになっていて、そのために、クロール塩素などが選択的に液相側に濃集しまして、ブラインが出来、それと共にガスの方は、水蒸気は逃げていますけれども、非濃集性のガスは、そこに残っていると、いずれにせよ、そこに二相ゾーンが発達しているという事が判明致しました。

 

(FIG-21)

それから、先程、深度と温度の曲線は示しました。しかしながらそれを圧力、深度を圧力で考えた時には、やや話が違ってまいります。ここで、この相図というのは、NaCL-H2O系のファーニエの相図でございます。けれども一応、温度と圧力の関係を考えた場合、その変曲点より上はほぼボーリング・カーブに規制されている事は明らかと思います。Hydro-static圧であろうと思われます。しかしながら、それより深い所では、A-B-Cという3つの可能性が考えられます。結論的にはAとBの中間的なCの様なカーブ、つまりHydro-staticよりやや高い圧力である、丁度、塩濃度が39%位の熱水のボーリング・カーブに沿っているという解釈が出来ます。

 

(FIG-22)

その他、接融変成体の所にFMI検層(注:Formation Micro-Imagerの略でシュランベルジャー社の商標)と言う比抵抗を使った手法で、1m当り何枚もあるような断裂の濃集体が明らかにされております。これは、花崗岩のコアで見る限り、そう多くありませんので、まさに、接融変成体に集中的に発達しているといった断裂であります。

 

(FIG-23)

その成因を考えるために、リソスフェアでよく脆性-塑性境界が求められておりますが、その様な岩石強度の理論を葛根田の井戸に適用してみました。リソスフェアの場合は、温度とか構成岩石とか、あいまいな点が非常に多くございますけれども、葛根田の場合は岩石も温度も比較的正確な情報が得られております。

 

(FIG-24)

パラメーターの詳細は、ここでは省かせて頂きますが、結局、ワヤリーの法則と、それから定常状態の塑性流動方程式でもって、この様な岩石強度のプロファイルが書けます。そして、注目すべき点は偶々4つのコアを使って応力比の測定をDSCA法(注:Differential Strain Curve Analgsis法、抗井より得られたコア残留歪を測定してx.y.z3方向の応力比を求める方法)と言うもので測定しておりますけれど、その値が、このモデル的に描いた地殻の応力強度にほぼ調和的であります。これは、ちなみに先程の温度の編曲点に対応しています。

 

(FIG-23)

そういう訳で、3100m付近で、非常に塑性的になるという事は今でも変りませんが、この図面から考えると、真の脆性-塑性境界というのは、もっと浅い所、2.4km付近であるという事が考えられます。そして、この付近というのは、むしろ深度方向に見た時の最大強度点でありますので、広域的な応力がこの部分に東北日本の広域的な応力が集中し、特にこの辺を中心に集中すると思われますので、先程のような断裂の発達の一部は、そのような応力集中によって説明できるものと思われます。もう1つは、接融変成作用、そのものの脱水反応によって説明できると思われます。

 

 

 

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