(FIG.-15)
コーラウ火山の北側は、海底から高さ1000m付近までほぼ垂直な断崖で出来ています。そこで私達は非常に苦労いたしまして、ああ言う、断崖絶壁をよじ登ってかなり学生達とともに危険な目に合いながら、コーラウ火山、1つのshield volcano(楯状火山)の成長史の最末期に当たる1000m位の部分を出来るだけ、詳しく調べるという事をして来ました。
(FIG.‐16)
今迄アメリカの研究者は殆ど道路沿の露頭しか調べてなかったのですが、我々は火山体のより深部から300ケもの試料を採って調べてみました。少し風化しているもの等を除けば、大部分は火山のどの深さで採っても、殆ど、コーラウ火山というのは特別な化学組成をしていて、そういう特徴は火山全体の特徴であるという事が私達のこれ迄の研究で分かってきました。
(FIG.‐17)
それで、次は海中部分の話に移ります。コーラウ火山というのは大部分が失われてしまい、海底に非常に大崩壊でできた流山(ながれやま)の露頭がずっと続いておりますので、JAMSTECのご協力を得て海底部分の詳しい調査に入りました。
それで、このコーラウ火山というのは、全体として約5000km3位の非常に大規模な山体崩壊をしています。昨年の調査ではオアフ島から250kmの所まで延長が認められました。この5000km3の山体崩壊という規模は、地球上で現在知られている火山の山体崩壊としては、もちろん最大のものです。それから、地球上全体の海底の崩壊地形としても、2番目位に数えられるのだそうです。それで、もしこれがただ一度に非常に高速で起きたとしますと、これは(例えば、地質調査所の佐竹さんという方が研究しておられますが)、太平洋全体に300mを超えるようなそんな巨大津波を発生した可能性があります。
もしそういう形で起こったとすれば、非常にカタストロフィックな環境破壊になったと思われます。それで、いつ、この山体崩壊が起きたのか?どの様な起き方をしたのか?という事を調べる事は、非常に重要な研究なんですけれども、今、2つの仮説が検討されています。
活動最中の火山というのは一番力学的に不安定な状態にあるので、その時に起きたのではないか、というのが第一の仮説です。
これは、アメリカのムーアさんという方が出したのですが。それに対して、今回、どうも色々調べていくと崩壊地形の上からはもっと新しいのではないか、という事が、だんだん分かって来ました。もしかすると、例えば、ハワイ島で現在見られるココヘット(Koko Head)とか、ダイヤモンドヘッドとか、ホノルルシリーズと呼ばれる小さい火山活動がありますが、それが起きたのが約50万年位前なのですが、その時、何らかの理由でこれが大崩壊を起こした可能性があります。
(FIG.-18)
それで、昨年の9月(8月から9月)にかけて、JAMSTECの協力を得まして、この地域で調査をいたしました。私達の調査は、先ず2週間この上で、シービームによる海底地形調査をして非常に正確な地図を作り、その後、ドレッジとか、ピストンコアをやったり、さらにJAMSTECの誇る1万m迄潜れるRobot ship「KAIKO」を使いましてこの地域で岩石サンプルを採るという調査を行いました。
(FIG.-19)
この図はその様子なのですけれど、このKAIKOを使わせて頂いてこういうような試料をこの地球から次々回収しました。
(FIG.-20)
これは、その時の乗船研究者の写真ですが、主任研究員はJAMSTECの仲二郎さん、それから北海道大学の宇井忠英教授、アメリカ側はハワイ大学及びUSGSから10人位の科学者が同乗しました。それから大学院生も乗り込みまして船の上で、岩石試料を早速薄片にして調べると言うことを致しました。