日本財団 図書館


海洋底地殻を造っている玄武岩は圧力が上がっていきますと、ガーネット(密度の高いザクロ石)が殆どを占めるようになります。で、この様に玄武岩そのものの組成に近いザクロ石の事をメイジャーという人が最初に実験室で合成しましたので、メイジャーライト(Majorite)と命名されています。こういう鉱物が、一体、今迄は、大体沈み込むプレートの事しか考えていなかったので、低い温度の実験しかなかったのですが、高い温度の実験もずーっとやりまして、物質が一体どういう温度と圧力でどのように変っていくかという事を調べております。

 

(FIG.-10)

さらに、次に必要なことは、そういう風に調べたメジャーライト・ガーネットというものが、地球内部でどういう温度と圧力だったら、どのような密度になっているかと調べることです。そこで、超高圧実験装置と非常に強力なシンクロトロンのX線を使いまして、温度と圧力のかかった状態で、ものの圧縮曲線を調べる状態方程式を取るという事をいたします。

 

そのような超高圧実験から得たデータを組み合わせて、地球内部で一体どういう所でそのマントルプルームの中に、例えば、マントル・カンラン岩とそれから沈み込んだ海洋底地殻が、密度が等しくなるか?あるいは、そこから分離するか、という事を現在調べようとしている訳であります。

 

(FIG.-11)

いよいよ、本題なのですが、マントル上昇流の中でマグマの発生源となる物質が、従来の考えのマントルカンラン岩ではなく実はエクロジャイトが大部分の源料であるとの仮説を立てた私達の研究グループはその仮説を検証するためにハワイの研究を最近始めました。

オアフ島というのはホノルルのある島ですが、約300万年前に出来たハワイの火山であります。で、オアフ島は、ワイヤナエ(Waianae)という火山とコーラウ(Koolau)という2つのハワイの盾状火山(shield volcano)から出来ています。

その内コーラウ火山というものは、非常にいろんな点で、ハワイのマントルプルームの事を考える上で重要な火山です。で、どの様に重要かというと、まず、コーラウ火山というのは、その半分が非常に大規模な山体崩壊をいたしまして海中に没しています。

そこで、逆にいえば火山断面が露出している訳ですね。深海底迄ずーっと火山の断面が露出しているので、火山の中が一体どのようなもので出来ているのかという事を調べる事が出来ます。

 

(FIG.-12) (FIG.-13)

それから、コーラウ火山というのはハワイ全体の火山の中で、非常に特異な化学組成を形成しています。で、それは、例えば、図-12で見るとよく分かりますが、ちょっと下を見て頂くと、これは、横軸が、MgO(酸化マグネシウム)のバリエーション・ダイヤグラムですが、他の火山、例えば、マウナロアとかキラウエアとか、あるいは、ロイヒに較べますとコーラウ火山というのは、ハワイの中で一番シリカに富んだ、つまり、マントル・カンラン岩よりも、エクロジャイトに近いような、そういう化学組成をしている、そういう特徴があります。

それから、上は同位体比の特徴ですが、同位体比で見ましてもコーラウ火山というのは、特別な化学組成をしておりまして、キラウエアとかマウナロアとかロイヒに較べると非常にバルクアース(bulk earth)、地球全体の仮想的な化学組成ですが、そういうものに非常に近いという訳で、地球の深部が一体どういう物質で出来上がっているか、あるいは、それは一体何億年前に地球の中に出来たものか、このような事を考えていく上で、このコーラウ火山というものは、ハワイの中でも特別な意味を占めた火山だ、という事がお分かり頂けると思います。

 

(FIG.-14)

それで、私どもは、このコーラウ火山の陸上部分を、これまで非常に詳しく調べてきました。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION