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こう言う訳で、アルファー・メンデレーフ海嶺系は、アメラシア海盆を白亜紀後期の1億2500万年前から7900万年前に起ったカルク・アルカリ岩の火成活動に伴って形成されたマカロフ海盆とカナダ海盆とに2分しております。カナダ海盆の南部のアラスカの近くには、海洋地殻が有ることが期待されております。この部分には、拡大軸の痕跡があります。白亜紀後期の拡大軸であると考えられています。それからガッケル海嶺、文献によってはナンセン・ガッケル海嶺と呼んでいますけれども、ガッケル海嶺は、ユーラシア海盆を南のナンセン海盆と北のフラム海盆に2分しております。ガッケル海嶺は、北米・ユーラシアプレートの境界の一部でありまして、FIG-9に出ております様に、アイスランドからずーと継ってくる大西洋中央海嶺の一部であります。ユーラシア海盆、それからノルウェー・グリーンランド海盆の海洋地殻はガッケル海嶺、モーンス海嶺、ニポビッチ海嶺の拡大によって、5500万年前に形成されたのではないかと考えられております。

 

北極海に於ける掘削といいますのは、これまで述べました様に厚い海氷が発達しておりますので、掘削やピストン・コアリングがなかなか進んでおりません。先程伸べましたドイツ、ノルウェー、デンマーク、カナダそういった所が協同して、特にドイツのポーラシュタインという砕氷能力のある研究船が、ここの所、非常に積極的に北極海の中に入っております。

FIG-3を見て頂くとお分かり頂けると思います。夏になりますと、普通の年であると、海氷の範囲は北極海の中央部に縮小し、陸域との間が海となります。で、冬場になりますと、北極海の大部分が氷結してしまう訳ですね。夏場になりますと周辺陸域の辺りがズート海水面が発達して来ますので、夏場この海域に入ることが出来ます。もちろん、エスコートが要ります、単独では無理であります。ポーラーシュタイン等はこういう島づたいに北極点の近く迄行っております。

国際深海計画ではDSDP、ODPでもう30年になりますが、その30年を迎えるに当って、纏めのリーフレットを作成しました。皆様お持ちと思います。これ迄北極海にJR号、あるいは、前のグローマー・チャレンジャー等は入っておりませんでした。最近は積極的に極海に入って行こうとしております。これ迄にありましたのは、―まだ入り口ですけれど―アークティック・ゲートウェーとして、LEG.151、それからLEG.162は、予想したよりも海氷の発達が厳しくて、予定した掘削が出来ませんでした。ある意味ではチョット、失敗しておりますけれども。先程の海氷の分布図で見ましたように、これ以降も積極的に中に入ってですね、北極海の掘削をして行こうと計画している様であります。

 

一番最初に申しました様にOD21になりまして、早い時期にライザー・システムを持った地球深部探査船が、この北極海に入って頂きたいと思う訳でありますが、これに先立ちまして、先程の「みらい」等を使った事前調査ですね。これをぜひ私達は大平洋に住んでおりますので、やはりベーリング海峡から入って行って、先程のシベリア沖、アラスカ沖などでピストンコアーを使った調査等を行う必要があります。アラスカ沖、それから、ベーリング海峡の東西では堆積の状況が違っている。あるいは堆積物の種類が違っている事が分っております。そういった事をもう一度確認する必要があると思います。大西洋の方はフレーム海峡を通って北欧の人達が一生懸命に頑張って、いい研究、あるいはいろんな事が分りつつあります。ロシア側、アラスカ側まだ空白であります。そこへは、やはり日本のテリトリーと言うか、私達が責任を持って調査と研究をしなければいけないと思います。

 

現在に於ける北極海の重要性について述べたつもりであります。北極海に於ける海洋科学でどういう事がそれでは分るのか、という様な事をまとめて、最後の結びにしたいと思います。

(1) 北極海に於ける海洋水の50%が世界中の海洋水と連動しております。北極海とノルウェー・グリーンランド海との深層水、及び表層水の交換の歴史、タイミング、こういうものを高分解能で解析して詳細に理解することが北極海のみならず、世界中の海洋にとって重要です。それは深層水を通じて、世界中の海と連動しているからです。

 

 

 

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