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1) その内の1つとして漂流岩屑(IRD)、氷河が運んで来た砂とか粗い礫岩、icerafted debrisと呼んでおりますけれども、漂流岩屑(IRD)の流入の歴史を復元していく事があります。これ迄の研究によりますと、南極では3600万年前から漂流岩屑(IRD)が見つかっております。一方、北極では、特に北極海、あるいは北太平洋や北大西洋、いわゆる北方域では、250万年前になってからであります。最近の研究によって、この年代がだんだん古くなりつつありますけれども、大変なギャップ、3千数百万年の違いが北と南にあります。この違いが何であるかと言うことを正しく解決しておかないといけないということがあります。

2) 2つ目にグリーンランドの氷層コア、それから深海底の堆積コアでは、迅速で激的な変化が地球気候に逆に影響を与えている事が明らかになっております。これまで述べましたように、北極海の海底コアではどうなっているのか、北極海の海底コアを調べて気候変動の時系列解析を正確に地球軌道要素との関連で見て行く事が必要であります。先程の多田さんの説明では、短期間の気候変動は非常にカタストロフィックになっております。一方、長期間での変動と言うのは、どちらかと言うと、一般的な、いわゆる傾向になります。そうしますと、こういったカタストロフィックな変動と一般的な傾向としての変動は、相互にどう言う関係になっているのか、例えば、短期間のカタストロフィックな変化が、長期間の一般的な傾向にプリントアウトされている訳ですね。それをやはり分離して検出し、各々のメカニズムを復元していく必要があると思います。

3) 3番目としては、熱塩循環thermol brine circulationの3次元的な拡がり、特に構造運動による海峡深度との関係で復元していく必要があります。

 

(2) 最後に地質現象として、例えば、こう言う事が指摘されております。

1) 地磁気異常の13番目というのがありまして、地質時代区分でエオシンとオリゴシンの境界になりまして、年数でいうと3500万年前になりますけれども、この時期に世界中でいろんなeventが一斉に起っております。例えば、1)タスマニアを含むオーストラリアが南極大陸から離れて行く時期に相当します。

2) 2つ目には、ユーラシアプレートと北米プレートの間の回転の極が変化しております。3)それから3番目は、北極海のフレーム海峡が(きょうは時間の関係で詳しく述べませんでしたけれども)開口した時期であります。世界中である特定の時期にeventが一斉に起って来ている。こういった一致、それから各々の地域に於ける違いについて研究していく必要があります。

 

(FIG.-11)

最初に申しました様に、我が国が出遅れております、ナンセン・アークティック・ドリリングのグループが既に掘削、あるいは、大口径のピストン・コアリングで堆積物や岩石を採るべき地点、そう言うものをproposeしております。これは1994年で少し古いのでありますけれども、これ迄述べました様に、この海域にはまだ船が入って長めの堆積物、あるいは基盤岩が採れたという話を聞いておりませんので、こういった所が、OD21に於きます北極圏に於けるターゲットにぜひ早い時期にして頂きたいと思います。

 

以上を持ちまして、ご紹介を終わります。どうも有り難うございました。

 

Q. ご質問、コメントがございましたら、お願い致します。

 

(JAMSTEC 西村一)

Q. 最期の図なのですけれども、やはり北極海盆の所は永久氷ですし、氷上からヤグラを立てて掘るとかいうのは検討されているのか、あるいは砕氷船のムーン・ループからですね、試水器を下ろすとか。

 

A. このナンセン・アークティック・ドリリングのメンバーの人達に拠って今から10年前ですけれども、期待されているのは、日本で開発した海底ボーリングの機械があるんですよね。ワイヤーで操作するボーリングのマシーンの機械だけ海底に沈めて、地質調査所あたりで言っているロック・コアリング、そういう装置が期待されておりまして、氷床が発達しているその下に機械だけセットしてドリリング出来るような、あるいはリモートセンシングでやるような事が、永久氷あるいは多年氷の発達している所では、出来るのではないか、あるいは、しないといけないんじゃないかと思います。

 

 

 

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