平成10年10月10日
深海地球ドリリング計画評価委員会
事務局科学技術庁研究開発局長殿
深海地球ドリリング計画の書面レビュー(回答)
鳥羽良明
(前日本海洋学会会長、東北大学名誉教授)
資料を拝見し、レビュー所見を申し上げます。
全体として、この計画は日本の国際貢献のあり方として、理想的なものと思います。と言いますのは、いま世界の緊急課題である、気候変動を含む地球環境の問題の基礎となる学問分野の課題に関わり、日本が主体性を持って、世界の多数国の参加と支援の下に進められる計画であるからです。
学問の発展の歴史には、新しい手段が、新しい学問分野を生み出し、新知見を含む、科学の飛躍的発展をもたらす契機になった面が大きいと思います。たとえば、人工衛星による観測とか、大型電子計算機の登場による数値モデルの発展とかがその著しい例としてあげられます。その点から見ると、今回の、プレート境界面を直接観測することのできる、ライザー掘削による大深度掘削は、成功の見込みが十分のようで、正にそのような契機の一つになり得ると思います。
特に、日本のライザー掘削船と、米国の従来型掘削船とが、統合国際科学計画の下で進められることを目指しているという点で、理想的であると思います。
国内的に見た場合、いま国の組織の改変による新体制確立の時期に当っているようですが、これが新体制確立への一つの強力なきっかけになってほしいようにも思います。
そして、同じことなら、早く実行できるようにするのが良いと思います。
最後に、私の研究分野に近い大気海洋変動の見地から見た楊合、次のように思います。地球環境変動・変化に対して人為的要素の影響が大きいと思われるいま、過去の間氷期を含む長期のグローバルな古環境変動の復元は、必須にして緊急の課題であり、それを可能にするこの深海掘削プログラムは、ぜひ実現してほしいと思います。