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3. 評価内容

 

3.1 本計画についての確認事項

本委員会は、計画提案者より計画概要及び自己評価結果の説明を受け、また「ライザー掘削国際会議(CONCORD)報告書」(1997年7月、海洋科学技術センター、東京大学海洋研究所、JOIDES/ODP)等の参考資料を検討した。さらに特に必要と認めた事項について、委員会が要請した専門家に説明を求めた。それらに基づいて本委員会がまとめた本計画の全体概要は以下のとおりである。

 

(1)なぜ深海を掘るのか?

水深約200mの大睦棚に続く大陸斜面から下に広がる深海底には、海洋表層から沈降した堆積物の厚い層があり、そこには大気や陸から運ばれた物質も含まれている。その下には火山活動を起源とする岩盤があり、これら堆積物と岩盤からなる地殻の下には、固体でありながら流動する性質を持つマントルがある。

本計画は、海面に浮かぶ掘削船から海底に達する掘削装置によって、地殻を貫き、その下のマントルまで達するボーリング(掘削)を行おうとするものである。これによって各層のコア試料を採取し、分析して、堆積物に記録された過去の地球環境の歴史を解読するとともに、地殻及びマントルの掘削によって、地球内部の構造と、海底下のプレート境界における巨大地震発生や地球内部のダイナミックな振る舞いを解明しようという総合的地球科学の計画である。

また、近年、その存在が知られつつある深海底下の特異な生物圏の実態を把握し、生命の起源とも関係する未知の微生物の探索をも目指している。

さらに、これまでの掘削によって、大陸斜面を中心として海底下にメタンガスが海水と結合して固体化した水和物(メタンハイドレート)となって大量に存在していることが知られるようになり、将来のエネルギー資源として、また、環境変動への影響の面からも注目されつつある。本計画は、このメタンハイドレートの安定性等についての研究も目的としている。

 

(2)深海掘削の歩み

・深海掘削は1959年マントルヘの到達を目標とする「モホール計画」の提唱を起源とし、米国主導のもと、現在では22ヶ国が参加する国際深海掘削計画(ODP。ジョイデス・レゾリューション号(JR号)を使用)に発展している。

 

・これまでの深海掘削計画は、プレートテクトニクスの証明、地球全体が温暖化していた白亜紀における地球の状態の解明、小天体衝突による生物大絶滅の詳細な過経の解明、氷期/間氷期と地球の軌道及び自転軸の揺らぎとの相関の立証など重要な仮説の立証や発見に代表される多くの成果をあげてきた。同計画は、その研究報告が毎年千件のオーダーで他論文に引用されるなど、地球科学において重要な役割を果たしてきている。

 

 

 

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