序文
現在、22ヶ国の国際協力のもと、米国の科学掘削船ジョイデス・レゾリューション号(JR号)を用いて国際深海掘削計画(ODP)が進められている。「深海地球ドリリング計画」は、このJR号の技術的限界を超える能力を持つ「地球深部探査船」を日本が開発し、それを米国の従来型掘削船と相互補完しつつ国際的に運用し、両船によって得られた掘削コア試料及び掘削孔を利用した地球科学及び生命科学研究を推進しようとするもので、海洋科学技術センターが提唱している。現行ODPは平成15年9月末に終了することとなっているが、それ以降については上記二船体制による統合国際深海掘削計画(IODP)を発足させることが国際的に合意されつつある。
この深海地球ドリリング計画では、平成15年10月よりIODPを発足させるため、平成11年度に地球深部探査船の建造に着手することとしている。その建造着手の是非及び計画全体の進め方について外部の専門家及び有識者による評価を行うため、平成10年7月16日に航空・電子等技術審議会地球科学技術部会において「深海地球ドリリング計画評価委員会」の設置が決定された。それに基づき、本委員会では7月21日以来、5回にわたって審議を重ね、本報告書を取りまとめるに至った。
本委員会においては、本計画が科学的に価値のあるものであり、ひいてはその成果は社会にも還元されるものと判断した。しかし一方、審議の過程において、日本の科学技術にしばしばみられる「ハードは立派だが、それを有効に使いこなすソフトに欠ける」という心配、すなわち掘削で得られた試料やデータを最終的な科学的成果に結び付ける研究体制・人材は大丈夫だろうかとの議論もなされた。
本計画の実施主体である海洋科学技術センターは、本報告書の評価結果を計画に反映させるべく最大限の努力を払うべきであるが、本計画が多くの省庁、大学・試験研究機関、参加各国との協力のもとに進められなければならないことから、関係行政機関においても地球科学技術を総合的に推進する観点から必要な措置が講じられることを要請するものである。
平成10年11月5日
航空・電子等技術審議会地球科学技術部会
深海地球ドリリング計画評価委員会 主査
松野太郎