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2. なぜ海底を掘るのか?

 

(なぜ科学掘削が重要なのか?)

この生きている地球、すなわち、気圏、水圏、生物圏、地圏などが織りなす壮大な相互作用を理解するために、人工衛星、陸上の観測網、海洋調査船やブイなどの観測手段が徐々に整備されてきました。このうち深海については今も局所的な手段に過ぎませんが、 1万m級無人探査機「かいこう」の完成によって、最も深い海底まで人間の目で確認して試料を採取できるようになりました。

しかし、地球の深部については地震波などで間接的に推測しているに過ぎません。地球の深部を直接調べることができるのは、唯一、科学掘削だけです。さらに、科学掘削で得られる柱状の試料(コア)には、過去の気候や生物活動、地殻変動などの歴史が記録されています(図5)。

 

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図5 試料はどのように採取するのか

 

(なぜ深海底を掘るのか?)

なぜ深海底での科学掘削が必要か? それは第一に、海洋の堆積物は陸と違ってあまり侵食を受けていないため、過去から現在に至る地球環境や地殻変動が時系列データとして記録されており、それによって将来の予測も可能となるからです。それとともに、海洋底を掘るということは、地球誕生以来のダイナミクスを支配し続けてきたメカニズムを解明することでもあるからです。

私たちがこれまでに学んできた地球のダイナミックな姿の多くは、この深海掘削によって初めて証明されたものと言っても過言ではありません。

第二に、まだ人類が到達したことのないマントルは、地球の体積の8割以上を占め、固体でありながら流体的ふるまいをするという特異な物理的性質によって地殻を動かしています。そのマントルヘの最短距離が深海にあるからです(図1)。

 

 

 

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