(3) 設備・器具の点検と整備
貨物油の積荷及び揚荷、燃料油の補給などのための設備や器具の損傷は、大量流出油事故に結びつきやすいものです。日ごろから各部の点検を行い、不良個所の修理、老朽部品の交換などを行っておくことが大切です。特に平常目の届かない箇所についても、定期的に点検及び整備を行ってください。通常の点検及び整備にあたって注意すべきことは、次のとおりです。
【点検】
(1) 油送パイプ、ホースの接続部等に漏れはないか。
(2) 油送パイプ及びパイプの仕切り弁、切替弁及びコックに漏れはないか。
(3) 油と水の仕切り弁には、漏れがないか。また識別マークをつけてあるか。
(4) 船外弁は正しくシールされているか。
(5) 圧力計・流量計・測深棒その他の計器類及び器具類は良好か。
【整備】
(1) 弁の開閉状態…一般に弁ハンドルを上方から見て、左に回すと開放され、時計回り(右回り)で閉まるようになっています。玉型弁の場合は、弁自体と弁棒が持ち上げられたり、下がったりするので、弁のしまる位置をマークしておくとよくわかります。
(2) 弁を閉にしたときは、振動などで開に戻らぬようハンドルをロープなどで固縛しておくと有効です(開にしていた弁でも振動で閉になることがあるので、そのような緩みやすい弁は固縛しておく必要があります)。
(3) スルース弁は楔形の仕切り弁となっているため、強く締め過ぎると、楔効果のために弁と弁座が圧着され、次に開放するとき非常に大きな力がかかりネジの部分を傷めて駒がはずれ、いわゆる棚落ちを生ずることがあります。仕切り弁(スルース弁)は、弁開閉の目盛板がついていますが、よく注意して正常に作動するように整備しておくことが重要です。
(4) 漏油受皿は、油が溜ったままにしておかないようにしておきます。
(5) 漏油受皿から、集油タンクまでのパイプの塞りがないようにしておきます。
(6) 油水分離器入口のストレーナーは、定期的に掃除します。
(4) 各パイプ及びバルブの識別表示
作業ミスで最も多いのは、バイブ操作ですが、このようなバルブ誤操作を防止するためには、各パイプ及び弁にはっきりした識別表示をすることが必要です。このため、各種パイプ及び弁には、よくわかる位置に用途別に識別塗装するとともに、貨物油系統及び燃料油系統のバルブには、タンク番号を記した標示板(吸入用のものと吐出用のものに色分けすること)を取付けておきます。また、各パイプ系統を色分けし、管系と管系を分離する弁を明示した関係配管図を作成のうえ、見やすい場所(弁の操作場所等)に掲示しておきます。
〔パイプ等の識別標準〕 (39.12.28、運輸省告示第491号)
タンカーの荷役に関係のある管系は、識別標準に準じて塗装しておきます。
(5) チェックリストの作成
各設備や器具の状況、漏油事故防止対策等の状況を点検するためのチェックリストを作成し、油の取扱い作業前に作業責任者がチェックリストにより各部の点検及び確認を行います。
(6) 緊急対応体制の確立
万一漏油事故が発生しても、大事にいたる前に油の流出を停止させ、流出した油を除去しなければなりません。このためには、平常から次のような対策を講じておくことが重要です。
(1) 油の取扱い作業中は、要所要所に監視員を配置して監視を強化すること。夜間の作業はできるだけ避けた方がよいが、やむを得ず行う場合は、監視員や作業補助員を増強するとともに、作業現場や付近海域を十分照明すること。
(2) 緊急作業配置等の緊急対応体制を定めておくとともに、日ごろから緊急時の措置について十分な操練を実施すること。
(3) オイルフェンス、油処理剤等の流出油処理用器材を整備し、すぐ使えるような所定の位置に備え置くこと。
なお、油の取扱い作業中は、エアパイプ、ホース取入口等に油受けを置くとともに、油が甲板上にあふれても海上に流れ出ないよう、スカッパー等を木栓、セメント、砂袋等で完全に閉鎖しておくことを忘れてはなりません。