7.1.2 要求仕様
先に「3.3 調査ユニット機能仕様の検討」でも述べたが、調査ユニットに求められる具体的なスペックは、以下のとおりである。
(1) 要求計測精度
調査ユニットは、災害発生後の港湾施設および水域のデータを計測し、災害発生前のデータと比較することによって、施設の変状や、変位を検知する機能を持つ。
“変位”とは、主として「岸壁法線の出入り」のことを指し、これまで発生した地震災害等のあとの調査において、常に重要なデータとして岸壁の変位が計測されている。
港湾施設の被害としては、阪神・淡路大震災において、岸壁の崩壊や大きな陥没等が発生しており、これらの変位は数10cmのオーダーであった。しかし、その他に発生した釧路沖地震等における岸壁被害状況は、岸壁の変位についてはそのほとんどが2〜3cm、大きくても5〜7cmでという状態であった。
従って、本調査ユニットの気中部の計測精度は少なくとも10cm以内、可能であれば5cm以内の精度が必要である。また、平常時に岸壁の長期の変位を観測するためには、何らかの工夫を加えて1cm程度の精度を目指す必要がある。
(2) 調査ユニットの可搬性
本調査ユニットは、災害の発生後に迅速に被災現場に急行することが求められる。
現地までどの様なアクセスを取るかは分からないが、少なくとも、本調査ユニットはヘリコプターや4tonトラックもしくは、1BOXカー2台程度に、構成ユニット毎にまとめた機器類を積み込み・運搬することが可能で、現地で設置対象となる小型船舶上にて容易に組立・設置できる必要がある。
7.1.3 調査ユニットの構成機器
前出の要求を基に、現状技術を用いてこれに対応するべく作成した調査ユニットの概念案の構成機器は「5.3 調査ユニット構成機器」の表にまとめたとおりである。
7.1.4 調査ユニットの仕様
これらの機器で構成される調査ユニットの概略の機能として、船舶航行速度:3knot、岸壁との距離:15m、水深:15mの条件で計測したときの精度は「5章 構成機器の精度」の表にまとめたとおりである。
5章でまとめた表には動揺成分が入っていないため、システム全体としての精度については一概には言えないが、各項目の精度を足し合わせてみると、測深計測精度は±3cm、写真計測による奥行き方向の精度が±2.8cmとなり、調査ユニットの計測精度の要求である5cm以内という条件を満たす。