C) 医療保険制度
医療保険制度改革は、国家医療制度改革の実験対象に組み入れられた大連市と鞍山市で実施されている。96年下半期に、医療制度改革の実施方法と関係政策を決定し、管理機構の設立、実施予定病院の選択などが行われた。
97年現在、両市での医療保険加入事業所数は1866社、職員労働者70万人に達しており、実験規模は96年の3倍以上に拡大している(注39)。
D) 最低生活保障制度
貧困労働者世帯に対する救済活動に関しては、丹東市を除く13市で解決困難弁公室などの救済機構が設立され、さらに区・県・企業レベルでも同機構の設立が相次いでいる。97年現在、全省で社会保障の対象となる者は14.3万人で、13市の平均最低保障基準額は129.6元(1人/1ヵ月)となっている。また、農村部における最低生活保障制度の設立については、96年より実験が開始され、97年現在、12市57県で正式に運用が開始されており、4987万元が投入されている(注29)。
<瀋陽市解決困難弁公室の活動概況>
「瀋陽市解決困難弁公室(以下、解困弁と省略)」は、95年6月に「送温暖工程弁公室(暖かさを届けるプロジェクト事務室)」として設立され、97年4月以降新たに「解困弁」の看板も掲げることとなった。組織は、市長を組長とする領導小組が設立されており、メンバーは市委および市政府関係部局と工会・婦連など外部団体の計33名からなっている。また同小組は、常設事務局を設立しており、各組織から出向してきた7名が日常業務にあたっている。財源は、1)市政府財政局からの拠出金(3000万元/年)、2)失業保険からの拠出金(400万元/年)、3)個人または団体からの寄付の3つのルートから得ている。
活動対象である「特困職工」総数は、年々減少傾向にある。活動当初の95年6月には、対象者は41,000人存在していたが、96年末には37,000人、97年末には27,000人まで減り、2年半で34.1%減少させている。「解困弁」の主な活動内容は、a)生活費の支援、b)優遇政策、c)自立支援、d)社会的互助システムの確立の4つに分類できる。a)生活費の支援では、基金から1人当たり120元(月額)を支出している他、重要な祝祭日(旧正月等)には、「送温暖工程(暖かさを届けるプロジェクト)」等と共に、一時金を支出している。b)優遇政策では、「特困証」の提示により、家賃・公共料金や税金の減免、穀物の割引など多くの優遇措置が受けられるようになっている。c)自立支援では、対象者の自立・創業を促進するため、1)所得税の免除、2)工商管理費の免除、3)都市管埋費の免除など税金の減免措置が作られている。d)社会的互助システムでは、ボランティアの「聯系特困制度(特別貧困者との連携制度)」が設立されている。これは市および区・県政府の幹部と特別貧困者の各1名ずつを組にし、2年間就職斡旋・生活相談など個別に支援をする制度であり、現在全市で14,000組存在する(注36)。
2) 吉林省の状況
A) 養老保険制度
国有企業の養老保険加入率は不明であるが、1997年には15,700社に属する52万人に26億元の退職金を支給している。現在97年7月の「国務院による統一された企業職員労働者の基本養老保険制度に関する決定」に従い、制度改革に関する計画を作成中であり、「実施細則」の準備を行っ