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い。しかしこの他、遅配・賃金不払い労働者や一時帰休労働者が、3省共に全職員労働者の10%以上存在しており、さらに国有企業には全労働者の30%以上といわれる企業内余剰労働力が存在しているため、労働者を取り囲む状況は非常に厳しいといえる。この対策として、各行政レベルで職工解決困難弁公室を開設し、1000ヵ所以上の職業紹介所を設立するなど、再就職プロジェクトを強化しており、1997年の東北3省の再就職者数は138.7万人で、全国総数の28.8%におよぶ高率となっている。なお、同年の再就職者数を省別に見ると、黒龍江省71万人(全国比14.7%)であるのに対して、遼寧省39.3万人(同8.1%)・吉林省28.4万人(同5.9%)と大きな格差が出ている。しかし、これは労働者総数や同プロジェクトの開始時期とも関係あり、この順で同プロジェクトの体制整備が進んでいるわけではない(「表2、東北3省の労働関係指標(1997年)」を参照)。

 

1) 遼寧省の状況

1997年現在、都市登録失業者数は対前年比2.7万人増加し43.5万人、都市登記失業率は3.7%(対前年比0.1%増)であった。全省での職業紹介所は、同6.8%減少し1329ヵ所、登録人数は同23%減少し92.3万人・回、再就職者数は同9.6%減少し39.3万人であった(注27)

97年1月から9月までの再就職者総数は39.2万人で、これは94年以降、この4年間の総数114万人の34%にあたる。97年は、再就職者が最も多い1年であった。しかし97年6月現在、なお110万人以上の失業および一時帰休労働者(下崗人員)が存在しており、これは全省の職員労働者の11%にあたり、依然厳しい状況にある。

97年現在遼寧省は、一時帰休労働者の総数が全国でもっとも多い省の1つとなっている。その理由は、1)全国の国有企業の1割が遼寧省に集中しており、2)職員労働者の比率が高く、3)工業が典型的な斜陽産業である原材料生産および重工業に集中しているためである(注28)

1997年9月現在、全14市中、阜新市・葫蘆島市を除く12市に、再就業工程弁公室が組織され、再就職プログラムが強化されている。さらに8つの実験都市の内営口市を除く7市で再就業服務中心(再就職サービスセンター)が設立され、企業ベースでも採炭業などの約30社で再就業服務中心が設立されている(注29)

<瀋陽布の再就職プロジェクトの事例>

94年に再就職プロジェクトを開始して以降、97年末までに再就職させた労働者は計56.5万人/回であり、97年のみでも16.5万・回に達している。しかしその対象は、開始当初は長期失業者(2年以上)であったが、近年は一時帰休労働者(下崗職工)に重心を移しつつある。

組織構成は、市政府内に市長を組長とする就業工作領導小組が設立されており、市委・工会・工商・財政・労働・公安など18機関の代表がメンバーとなっており、ここで主要な政策を総合的に決定している。同小組は、さらに常設事務局を伴っており、瀋陽労働力市場管理委員会弁公室内に、設置されている就業弁公室がこの任にあたって

 

 

 

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