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以上の状況に対して東北3省の各地方政府は、失業者の増大や企業内余剰労働力の解雇に対応するため、94年以降「再就職プロジェクト」を実施し、省ごとに1000ヵ所以上の職業紹介所を設立している。また生活困窮者の保障では、最低生活保障制度を実施しており、例えば95年以降遼寧省では各行政レベルで「職員労働者の困難解決事務室」を開設するなど、積極的な救済活動により、共に一定の効果を上げ始めている。

 

(2) 「再就業工程(再就職プロジェクト)」

1) 活動内容

主な活動としては、1)再就職者を雇用した企業に対する税金の減免措置や銀行借款などによる優遇政策、2)職業紹介所の開設、3)再就職者のための職業訓練の実施、4)再就職希望者の創業資金の無利子貸し付け、5)生活困難な貧困世帯に対する救済資金の支給などを行っている。

2) 組織(写真1]〜9]参照)

一般的には市政府内に、市長を組長とし市委・工会・工商・財政・労働・公安などをメンバーとする就業工作領導小組を設立し主要な政策を決定している。また同小組と同様な組織は、区・県レベルにも設立され、街道委員会や居民委員会にも事務局が作られており、縦(上級機関から下級機関へ)横(同じ行政レベルにおける各部局間)で協調して活動できる体制となっている。

3) 課題

同プログラムの主な問題点としては、労働市場の需給や同プログラムの実施規模の問題から、再就職する者より発生する方が多いため、失業者・半失業者が累積拡大している点にある。また制度的問題としては、各資金源からの拠出が不安定でありプロジェクト経費が不足している点があげられる。労働者自身の問題としては、観念が保守的すぎ第3次産業への転職を拒んだり、技能が古く単一的であるため、転職が困難な者が多い点があげられる。

4) 遼寧省の実績

1997年9月現在、全14市中、阜新市・葫蘆島市を除く12市に、再就業工程弁公室が組織され、再就職プログラムが実施されている。さらに8つの実験都市の内、営口市を除く7市で再就業服務中心(再就職サービスセンター)が設立され、企業ベースでも採炭業などの約30社で再就業服務中心が設立されている。1997年現在、全省での職業紹介所は、対前年比6.8%減少し1329ヵ所、登録人数は同23%減少し92.3万人・回、再就職者数は同9.6%減少し39.3万人であった。これは94年以降、この4年間の総数114万人の34%にあたる。97年は、再就職者が最も多い1年であった。しかし97年6月現在、なお110万人以上の失業および一時帰休者が存在しており、これは全省の職員労働者の11%に当たり、依然厳しい状況にある。

 

 

 

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