第2部 巻末資料
国有企業改革の現状と課題
-東北3省の企業破産の動向と社会に与える影響-
I、 レジュメ本文
<報告のポイント>
1、 主要テーマ
国有企業改革の地域的傾向とその住民に対する影響を、東北3省(遼寧省・吉林省・黒龍江省)を事例に概観する。
2、 報告内容
(1) 国有企業改革、特に企業破産にどのような地域的傾向があるか。
→企業破産の全国的経緯と省別動向から考える。
(2) 地方政府は失業者などにどのように対応しているか。
→地方政府の失業者・一時帰休者に対する再就職、および生活保障の実施内容から考える。
1、 企業破産の動向
(1) 国有企業改革の政策分類
一般的に、国有企業改革の基幹となる政策は、企業自身の改革である(1)現代企業制度改革であり、その一部として(2)株式会社制度の導入や、(3)企業集団の形成、(4)中小企業改革が実施されている。また、これを実現する上で社会環境を整備するための補完的政策として、(5)資本構成適正化モデル都市(優化資本結構試点城市)に限定した実験や、(6)国有資産管理制度の改革、(7)再就職プロジェクト、(8)社会保険および最低生活保障制度の改革が実施されている。
(2) 企業破産の全国的動向
経済参考報(1997年1月28日)によると、89年から96年までの企業破産総件数は11,627件であった(「表1、破産立案件数」を参照)。89年から91年まで「中華人民共和国企業破産法(試行)」は、事実上極めて限られたケースにのみ実験的に適用されており、89年は98件、90年は32件、91年は117件のみであった。しかし、「全人民所有制工業企業経営メカニズム転換条例」が公布された92年には428件(対前年比265%増)、「中華人民共和国公司法」が実施された94年には1625件(同128%増)と急増し始め、96年は6232件(同161%増)もの破産があり、この年だけで全期間中の半数以上を占めている。
(3) 企業破産の地域別動向
1) 省別の動向
1995年〜96年(2年間)の総破産作数は8617件であり、内訳は第1位が山東省の1210件、第2位が黒龍江省の1145件、以下第3位河北省1024件、第4位湖南省832件、第5位遼寧省646件であった、上位5位までで、全体の56.3%を占めており、企業破産を政策的に特定の省に集中させている。95年〜96年の絶対数と増加率の双方を考慮すると、遼寧省・湖南省・河北省・吉林省・江蘇省等で急速に企業破産が促進されている(「表2、省別破産企業数(95年〜96年)」を参照)。