E 細かい質問で恐縮なのですが、30頁目に、企業破産に積極的な地域、消極的な地域というご説明がありまして、破産法から言うと、破産を申し立てるのは債権者あるいは企業自身ということであります。そうすると、積極的であるか消極的であるかというのは、債権者あるいは企業自身ということになろうかと思うのですけれども、ニュアンスからするとそうではなくて、省政府なり何なりの意向で積極的であるか消極的であるかというふうに考えられるようです。実際に破産を決定しているのは、その法律の運用ではなくて、省政府の意向で破産しなさい、するのはよしなさいというのが、実態としては行われているということでしようか。
吉田 おっしゃるとおりだと思います。日本の破産と中国の破産はちょっと違います。中国の破産というのは、計画倒産ではないのですが、計画的な倒産です。さらに申し上げますと、まだ希望のある会社、もしくは影響力の大きい会社については破産をさせるけれども、どうでもいい会社は破産すらできないというのがこれまでの通例のようです。
企業が破産するためには、負債に対する引当金が必要です。さらに、企業を破産させた後で、破産した企業に勤めていた労働者の再訓練手当や各種保障金を払わないといけない。従って、破産したいと思う企業は、現状ではさらに銀行から融資を受けなければ破産できない状況にあります。ただ、それは100%非生産的な貸付ですから、銀行は、当然、したくないわけです。
ですから、各都市あたりに、その破産引当金をどのぐらい使えるのかという枠が決まっています。先ほど申し上げましたモデル都市……、資本構成適正化モデル都市ですが、そのモデル都市では、優先的に企業破産ができます。ただ、これについても市の幹部が毎度会議を開いて、この企業については破産をさせる、この企業に関しては破産させないと決めているそうです。その辺の実態については、NHKが3年前に撮ったドキュメンタリーで非常によく撮られていました。そのドキュメンタリーというのは、藩陽の中小企業が、もうどうにも立ち行かないので破産申請するため、市政府のいろいろな部署を回るのですが、結局、破産すらできないという状況を非常によく撮っていました。それが現状だと思います。破産引当金の枠の問題で、すべての企業を破産させることができない。そのため、行政の裁量権が大きくものを言うということです。
もう1つ言えば、社会保障制度がまだ完全に整備されていませんから、破産することによって、放り出される労働者に対して、ある程度の保障をしないといけない。ただし、