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さらに、東北3省にはもう1つ興味深い傾向があります。黒龍江省ですが、表2の一番右側の増加率をご覧ください。対前年比の増加率が-9.8%です。この2年間でマイナスを記録したところは、ウイグル自治区と黒龍江省だけです。まず数字がおかしい。それから、上から5番目の遼寧省をご覧ください。これも、対前年比増加率を見ますと、1268.2%のプラスになっています。これも、ほかの省と比べて異常に高くなっています。つまり、黒龍江省は、政策的な意図で企業破産が抑えられている。一時、急増した後抑えられている。そして遼寧省は、政策的な意図で、こちらは逆に、企業破産を急増させていると考えられます。ただ、これはあくまで推量です。以上が企業破産の動向です。

簡単にまとめますと、企業破産の積極的な地域は、環渤海以北の沿岸地域、それから内陸地域に集中しているということ。それから、企業破産が消極的な地域として直轄市と少数民族自治区が挙げられること。そして東北3省は、非常に企業破産が高い地域であること。さらに、東北地域の内でも、一番北の黒龍江省と一番下の遼寧省は、数字の動き方か非常に不自然だということ。この4点が、結論として言えると思います。

では、次に30ページの「2、地方政府の失業・最低生活保証対策」の「(1)失業・一時帰休者の動向」をご覧ください。表のほうは37頁の「表4、東北3省の労働関係指標(1997年)」というところをご覧ください。これは、毎年1回、各省政府が発表する「国民経済と社会発展に関する統計公報」に基づいてつくられています。まず97年の登録失業率をご覧ください。この表4の左側上から4番目のカテゴリーになります。都市部の登録失業率を見る限り、失業率は、全国平均が3.1%であるのに対して、遼寧省が3.7%、吉林省が2.7%、黒龍江省も2.8%と、ほぼ平均並みの数字になっています。遼寧省は若干高く、吉林省、黒龍江省は若干低いのですが、ほぼ平均並みと言えます。ただ、これはあくまで都市部で登録されている失業者の数で、実際の状況ではありません。

私のヒアリングによりますと、遅配や賃金不払い労働者、それから一時帰休など再就職が必要な労働者が、3省ともに全職員労働者、つまり都市部のサラリーマンで10%以上存在します。さらに、現在、稼働している国有企業の労働者の中にも、30%前後の余剰労働力を内包しています。

さらに、これは遼寧省のケースですが、月収150元以下の不完全就業者も加えると、全体の30%近くになります。ですから遼寧省をケースにとりますと、都市部のサラリー

 

 

 

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