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5 今後の船舶における対策技術の提言

 

今回の調査により国内においては全排出量に対する船舶のNOx排出寄与割合は大きく、燃料消費量と直接結びつくCO2ガスを含めた地球温暖化物質の排出寄与割合は少ないことがわかった。

しかし大都市港湾域など局所的な寄与割合を考えると、寄与割合が高くなること、これに対応するための新たな規制が提案されること、も予想される。しかし、排出係数、排出実態に関する情報収集は充分とはいえず、今後にいくつかの課題が残った。

●環境庁の窒素酸化物総量規制マニュアルに定められた方式で計算されるNOx排出量は、IMO規制値による排出量と比較した場合、同等以下となり、両者の整合性が欠けていると考えられた。今後IPCCなど、国際間での排出量の比較のためにも、排出係数の統合化が望まれる。

●メーカーはIMO規制に対応する技術を中心に技術開発を行っているが、米国カリフォルニア州での動向に見られるように、今後は地域規制が提案されることも予測される。

これに対応するために、部分負荷時に効果のある低減技術の開発が望まれる。

●将来的な地域規制NOx規制に対応する低減技術として、A重油への燃料転換、水利用技術、タイミングリタードを含む燃焼改善技術およびSCR(選択接触還元脱硝)技術が、有効であると考えられた。

●NOx以外の汚染物質についての排出データを更に収集する必要があると思われた。特にN2Oについては、大型ディーゼル機関におけるデータが少なく、今後観測・測定体制を整える必要がある。

●CO2排出量に直結する燃料消費量については多くの統計資料があるが、運航実態についてのデータ蓄積が不充分である。今回の調査においては、漁業、プレジャーボート、ハーバータグなどについて運航実態からの検討を行い成果を上げたが、一般船舶の港湾域における停泊時の燃料消費量、航路帯の実態などの情報をさらに集約する必要があると考えられた。

●世界規模では、内航海運、漁業、レジャーなどについての情報集約が不充分であり、インドネシア、中国、マレーシアなど内航海運が今後活発になるであろう途上国への国際間の協力も含めて基礎データの収集が望まれる。

 

 

 

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