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4.2.3 大気汚染物質削減に関する今後の動向

既に述べてきたように、カリフォルニア州においてはSCR搭載船舶やFIPsなどの非常に厳しい規制が何度か提案されてきた。特にカリフォルニア州ロサンゼルス郡は「O3極度汚染地域(extreme area)」として指定されており、その対策として同地区内においてのみ適用される厳しい規制が提案されてきたことに注意する必要がある。同地区の汚染状況の特殊性を考慮すると、同程度の規制値が米国内の他の地域に提案される可能性は少ないと考えられる。例えば、米国内にはマサチューセッツ州やニュージャージー州など、東海岸にもO3環境基準値が未達成の地域(Severe-17地区)があるが、同地区内においては船舶からの排出量推定値が陸上排出源に比較して少ないためか船舶に対するFIPsは今までのところ提案されていない。

逆に、国内においては、大きな港湾地域を抱えかつNOx環境基準値が達成されていない地域において、EPAのFIPsを参考にした地域規制や専用ふ頭を抱える事業者への行政指導が今後提案されることも予想される。この場合、荷役時も含めた港湾区域内などにおいてNOx排出量の削減が求められることとなろう。リージョナルな規制に船舶単体で対応する場合には、従来以上に部分負荷時に有効な低減対策が重要になってくるものと考えられる。今回の聞き取り調査においても、IMO一次規制程度の低減率に対してはほぼ全域にわたり同等の低減率が期待できるとするメーカーが多かったが、低減率が大きくなるにつれて負荷全域での効果は期待できないとする回答が多かった。また、SCRのように、低負荷時には排ガス温度の低下から、原理的に反応速度が遅くなる技術もあることから、今後さらに調査研究を進める必要があると考えられた。

また、主機に関しては全運転時間で削減率の高い低減技術を使用する必要がないことから、低減率を航海中に調整可能な技術が必要と考えられた。例えば、水利用技術などは装置のオンオフが比較的簡便にできることから有効と考えられる。同様にVITに代表される噴射調整機構や、さらに包括的に燃焼制御を行う電子燃焼制御技術も将来的には有望と考えられた。ただし、この場合には、実際に低減技術が機能しているかを確認するためのモニター機構および監視制度の開発も必要となると予想される。

さらに、船舶単体への規制だけでなく、大型専用ふ頭における荷役時の陸電利用や、港湾における荷役機械やプレジャーボートなどの中小規模機関に対する規制のごとく新たな形の規制も考えられ、荷役システムや港湾システム全体の再検討も今後は必要になると思われた。

 

 

 

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