プロジェクト名 黒潮の開発利用調査研究 科学技術庁
研究期間 第III期(平成5〜11年度)
予算 第III期合計額1,092,776千円
研究体制
(1) 亜熱帯循環系の変動メカニズムの解明
1] 副循環系の実態把握(海上保安庁、気象庁)
2] 黒潮変動調査(海上保安庁、気象庁、海洋科学技術センター、水産庁)
3] 黒潮源流域調査(水産庁)
4] エネルギー伝播メカニズムの解明(海上保安庁)
(2) 大気変動への影響解明
1] 大気擾乱による亜熱帯高気圧変動への影響解明(気象庁)
2] 水温変動による亜熱帯高気圧変動への影響解明(気象庁)
(3) 海洋生物の生体への影響解明
1] 動・植物プランクトンの分布と生産構造変動の把握(水産庁)
2] 表層性魚の初期生態変動の把握(水産庁)
(4) データの標準化(海上保安庁)
研究概要
黒潮は赤道海域から日本周辺海域に至るまで膨大な海水と熱を運び、日本の気候はもとより漁業、農業、海運等の社会・経済活動に大きな影響を与えている。また、黒潮流域は、水産をはじめ各種資源の開発利用が期待されており、社会経済の上からも重要な海域となっている。そのような黒潮の重要性を鑑み、黒潮開発利用調査研究が開始された。第I期(昭和52〜60年度)では、日本周辺の黒潮流域の総合的調査を進め、海域特性の把握および開発ポテンシャルの検討を行った。第II期(昭和61〜平成4年度)では、第I期の成果を受け、東シナ海を含む黒潮循環系の諸特性を把握することを目標とした調査研究を行った。また、黒潮が東シナ海において大陸河川や大気海洋相互作用の影響を大きく受けていることから、中国との共同調査を実施した。
第III期では、これまでの研究成果を踏まえて日本周辺において効率的なモニタリングを継続しつつ、日本南方の亜熱帯循環系の海洋構造、循環構造の解明とそれらが日本周辺の海況、機構、水産等に及ぼす影響を把握することを目標とした研究を行う。研究課題は、(1)亜熱帯循環系の変動メカニズムの解明、(2)大気変動への影響解明、(3)海洋生物の生体への影響解明、(4)データの標準化の4課題である。なお、亜熱帯循環系の影響は、日本のみならず東アジア全体に及んでいることから、国際的な共同調査・研究を実施することが必要であるため、第II期に引き続き、中国との共同観測、研究者交流、資料交換等による共同研究を実施する。
研究成果
(1) 亜熱帯循環系の変動メカニズムの解明
1] 副循環系の実態把握
表面海流観測用の漂流ブイを放流し、その運動をARGOSシステムによって追跡した。亜熱帯反流は夏期には明瞭であったが冬季には不明瞭であった。一方、亜熱帯反流を特定する客観的な方法として、力学計算による方法、表層海流計の実測流による方法、Δstを用いる方法を比較検討した。
2] 黒潮変動調査
CTDデータより、トカラ海峡における地衡流速の鉛直断面構造を調べた結果、強流部の幅は10マイル程度で、その出現する位置は、海峡北部、海峡谷部、海峡谷部の北斜面の3ヶ所に限定されることが分かった。また、係留系6系を回収し、係留系によって得られたデータから流速および水温の季節変動の特徴を抽出した。