日本財団 図書館


ひるがえって、陸上における製品開発にも適用でき、人の心理的な満足を高める感性工学にも海洋生物の知識を応用する。

 

(3) 生命科学技術

 

海洋生物(バクテリア、菌類、藻、無脊椎動物など)の生理的機能とその設計原理を明らかにし、材料、触媒、バイオテクノロジー、医薬品などに応用することによって、新しいプロセスの開発あるいは健康増進に役立てる。

 

1] 材料デザイン(バイオミメティクスおよびその応用)

生物は基本的にはタンパク質や核酸などの分子でできた機械であると考えられる。その特徴は、ナノメーターの小さな部品でできており、柔らかくかつ非常に高いエネルギー変換効率をもつシステムである。生物の機能を分子でできたシステムとして、その構造と動作原理を解明し応用するバイオミメティクスを基礎として、生体が実現している知覚センサー、効率の高いエネルギー変換、低温作動触媒、軽量で高強度の構造材料開発などに役立つ設計コンセプトを明らかにする。

 

2] 海洋遺伝子情報資源によるバイオテクノロジー(バイオインフォマティクスおよびその応用)

熱水口近傍の生態系に生息する微生物の遺伝子情報を解析し、耐熱性タンパク質および代謝経路を解明する、あるいは光合成タンパク質の光反応中心と光収穫系タンパク質を利用するなど、特異な生命の機能を遺伝子レベルで操作し、利用するバイオテクノロジー。海洋生物の生理学的適応メカニズムは、材料、触媒、工学に豊かな新原理をもたらす。

 

3] 海洋性機能性食品・医薬品(海洋生物工場)

鮫には、軟骨と特殊な免疫機構による抗ガン特性がある。鮫の白血球にあるAKG(Alkylglycerols)という免疫性物質はガン、風邪感染に効果がある。マングローブの根は、悪性の腫瘍の抑制に効き、その他関節炎やエイズに効く海洋生物も発見されている。このように人にとって有用な酵素をもつ海洋生物を探索し、海洋生物の機能解明とその応用として、トランスジェニックフィッシュなどを用いた有用物質を生産する海洋生物利用システム。海洋生物の化学的および生物学的研究による人の健康の増進を図る。

 

(4) 海洋生物保全

海洋生物種の多様性は、昆虫をのぞけば地球上の全動物種の3分の2以上になると考えられている。また、珊瑚礁生態系は地球上で最も生物多様性の高い系であることが知られている。日常の食料をとってみても数多くの食品が海洋からもたらされている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION