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このように陸上生物と比べて多様な海洋生物の生態を明らかにし、海洋という過酷な環境において適応しつつ多様性を保存している生態系の仕組みを理解し、生物種の保全および水産資源の確保に役立てる。

 

1] 海洋生物の回遊挙動(衛星追跡)

2000年には鯨生態観測機能を有する衛星が我が国から打ち上げられる。データを送る発信器を海洋哺乳類に装着し、海洋における未知の挙動を解明できる。海洋生物の行動を知ることによって海洋循環、海洋深層の構造などを推定することができ、海洋環境の動的な構造そのものを知ることにもなる。

 

2] 海洋生物コミュニケーション(高等海洋生物の情報認識、集団行動解明)

イルカやクジラなど海洋高等生物のコミュニケーションを知ることは、ほ乳類の海洋環境への適応の仕組みを知ることにつながり、人間と環境適応のモデル系として研究されている。また、イルカとの会話が成立し、観測機器等の装着させ解放することによって海洋環境そのものの情報を直接入手することも可能になる。

 

3] 沿岸・遠洋養殖システム(海洋生物行動制御)

海洋漁業、養殖および栽培は、我が国の食料生産と原材料の重要な源になっている。魚群の行動パターンを知り、魚群の行動範囲を予測することができれば、漁獲量の確保と水産資源の保存が可能となる。

 

(5) 地球環境維持

21世紀にむけてエネルギー消費の増大、人口増加にともなう食料危機、廃棄物、有害物質の天然への放出、森林の減少、砂漠化など、地球環境は悪化の一途をたどる。従来の海洋開発の実態は、これらの「つけ」を海におわせる側面があり、ひたすら海洋の資源を消費し、海洋そのものを変化させてしまい、修復不可能な状況にまで、追いやる危険性を含んでいる。今我々に問われている海洋開発の姿は、海洋に学ぶ姿勢である。地球における生命維持システムとしての大気-海洋システムの成り立ちを明らかにしつつ、持続的な経済発展を達成しうる地球環境維持技術を確立する。

 

1] 大気-海洋-沿岸域システムの観測(生物生産、海洋物質循環、気候変動)

大気-海洋-沿岸域を含む局所的かつ広域的な情報を、衛星および航空機リモートセンシング、海洋における各種モニタリングを組み合わせて取得し、海を知ることで地球を触診できる観測体制を実現する。蓄積された環境プロセスのモニタリングデータのデータベース化とモデル化を推進し、地球環境を維持するのに必要な、生物活動、物質循環、気候変動などの理解を増進する。

 

 

 

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