3.3 先端科学技術の適用の可能性
(1) 検討の考え方
海洋分野への適用が可能な先端科学技術をいくつかの例を挙げて以下に示す。ここで取り上げた事例を基により詳細な検討は次年度以降に行う予定である。
まず最初に、表3.3-1に「2025年の科学技術(科学技術庁)」において議論されている海洋分野における重大課題と実現次期の予測を示す。この中では比較的短期的な課題として「海洋観測関連技術」、中・長期的には、「新しい船舶技術(航行、動力)」、「地球環境保全技術」、および「新エネルギーに関する技術」が重要課題として位置づけられている。
したがって、ここでは先端科学技術のうち船舶関連ハードへの応用技術として最も関連が深い「材料・プロセス分野」、海洋観測との関連で「エレクトロニクス分野」および「情報通信分野」、地球環境保全との関連で「環境・エネルギー分野」についていくつかの例を示した。また、海洋資源・生命との関わりから「ライフサイエンス・バイオテクノロジー・医療分野」についても取り上げた。この中には、すでに海洋分野への応用検討が始まっている技術も含んでいる。
また、ここでは主に三菱総合研究所の「全予測・先端技術」(ダイヤモンド社)などで紹介している先端科学技術、および本検討委員会における委員の講演内容を例にとり海洋への適用の可能性についてとりまとめた。
(2) 先端技術分野別の動向と海洋へ適用可能な新技術例
1] 「材料・プロセス」分野
材料・プロセス分野では計算科学の進歩に伴って、材料機能のシミュレーション、触媒作用の解明、生体機能、立体機作などの解明等が期待されている。これにより分子原子レベルでの精密合成技術の開発も現実味を帯びてきている。また、地球環境、資源、エネルギー問題にも材料・プロセス技術は重要な役割を果たすものと考えられる。分野の最新動向を大別すると以下の4点に分類できる。
1) 原子・分子の操作による精密合成と構造制御
2) 高度計算科学の材料・プロセス設計への展開
3) 生体機能の解明と高機能材料・プロセス開発への展開
4) 地球的諸問題に関わる材料プロセスの開発
注目されている材料の船舶や、海洋構造物への応用展開が期待できるものの事例を以下に示した。