(2) 解析例
上述の各プロジェクトについて、プロジェクト整理シートを元に、それぞれ解析を行った。
1] 魚介類の初期生態解明のための種判別技術の開発
テーマの設定は、我が国の水産資源量についての知見を深めるという意味で、ニーズに即している。研究内容についてはかなり基礎研究的な色合いが強く、今後の進展が期待される分野であると考えられる。研究期間は平成7年度から9年度までにわたる3年間であるが、基礎研究として3年間だけで完結してよいのかという疑問は残る。研究内容に見合った予算規模であったかについては不明である。研究体制については、水産庁各研究所と東京大学海洋研究所により実施されており、他の省庁との連携はみられない。研究成果については、当初予定の範囲内では達成されていると考えられる。
委員からは以下のようなコメントを得た。水産資源量の動向を把握するためには卵稚仔の種判別が不可欠であるが、形態学的な判別が困難な場合が多い。このプロジェクトは免疫学的または分子生物学的手法を用いた簡便、迅速かつ定量的な判別技術の開発を目的として開始された。3年間の研究から、モノクロナル抗体を用いた二枚貝浮遊幼生およびmDNAを用いたマサバとゴマサバの種判別法等について、ほぼ実用化が可能と思われる技術を開発した。
2] 黒潮の開発利用調査研究
我が国にとっても有効な利益をもたらす黒潮を取り上げるという点で、研究テーマの着眼点は申し分ない。その反面で、研究テーマ自体はかなり大きな設定がなされており、やや具体性に欠けている。研究期間は第I期から第III期までの継続性を考慮するとかなり長期間にわたるプロジェクトであり、着実な成果の積み上げが期待される一方で、長期ゆえの問題点も抱えていると考えられる予算規模については、内容に完全に見合っているのかどうかは不明であるが、比較的大きなものである。研究体制については、科学技術庁が管轄省庁であるが、実際には海上保安庁、気象庁、水産庁が中心となっており、この点では横断的なプロジェクトであると考えられる。研究成果については、当初予定の範囲内では達成されていると考えられる。
委員からは、日中黒潮国際共同調査として、2国間の協力・競合により東シナ海から太平洋にかけての黒潮流量の季節、経年変動、さらには対馬暖流形成の実態解明等多くの成果を得た、とのコメントを得た。