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ワンポイント 消防職員のための法令用語解説

 

借地借家法 (五)

 

八 地代増額についての調停前置

民事調停法二四条の二の規定によると、借地借家法一一条の地代増額請求について、訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならないことになっている。これは、借地借家法施行前からの借地関係にも適用される。

管轄裁判所は、借地の所在地を管轄する簡易裁判所である。当事者が合意すれば、借地の所在地を管轄する地方裁判所にも調停申立てをすることができる。

 

九 調停委員会による調停条項

調停は、当事者が合意しなければ成立しない。

しかし、地代増額の調停においては、当事者間に、調停委員会の定める調停条項に服する旨の文書が、調停申立て後に調停委員会に提出されているときは、調停委員会は、当事者間に合意が成立するみこみがないときでも、または、当事者間に成立した合意が相当でないときに、適当な調停条項を定めることができる(民事調停法二四条の二第一項参照)。この調停条項を調書に記載すると、調停が成立したものとみなされる。そして、その記載は、裁判上の和解と同じ効力を生じる(民事調停法二四条の二第二項)。

 

一〇 必要費や有益費の償還請求

民法一九六条一項の規定により、借地人が土地の保存のために要した費用があるときは借地の返還に際し、地主に必要費として償還請求できる。契約期間終了のときなどに請求できる。

また、民法一九六条二項により、借地人が土地の価値の増加等のための有益費を支出したときは、その価値が増加している場合に限り、支出した費用又は増加額を、地主側が選択して借地人に償還することとなる償還請求が借地人に認められている(民法一九六条二項参照)。

 

一一 借地権の相続

借地権は、相続の対象となる。借地人が死亡したときは、相続人が借地権を相続する。

 

一二 一時使用の借地権

臨時設備の設置や、その他一時使用のための借地権を設定したことが明らかな場合には借地借家法の多くの想定が適用にならない(借地借家法二五条。建築工事の現場事務所や、作業員宿舎が、それにあたる例である)。

借地借家法施行前の一時使用の借地権も同様である。

一時使用の借地権になるかどうかについては、土地の利用目的や、地上建物の設備、構造、賃貸期間等によって判断される。

単に、契約書に一時使用の借地権と定めても、それだけでは、一時使用の借地権とはならない。

全消会顧問弁護士 木下 健治

 

 

 

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