しかしながら、不注意は時として命までも奪うものである。我々消防職員は、全力を尽くしているのだが、力不足さえ感じてしまうことがある。今後ますます、複雑多様化する交通事故、そして各種災害に、我々消防職員は全力を尽くさなければならない。
(米陀 政則)
予防・広報
『ザ・出前訓練』〜いざ、商店街へ〜
豊中市消防本部(大阪府)
はじめに
豊中市は、大阪府の北部に位置する人口三九六、〇〇〇人、面積三六・六km2の住宅都市で、西部には大阪国際空港、北東部には昭和四五年の万国博覧会により開発が進められた千里ニュータウンがある。
本市は、大阪市の衛星都市として早くから住宅開発が進み、市全体が市街化区域で、二一世紀を展望した「緑豊かな生活文化創造都市」をキャッチフレーズに、うるおいある快適な都市づくりを目指して、自然と文化の共存を推進している。
現在の消防組織は、一本部・二署・七出張所で、四〇一人の消防職員が「火災のない安心して暮らせる街づくり」を目指し日夜消防業務に努めており、非常備の消防団組織については、一団本部・十四分団で構成され、五七五人の消防団員が、地域愛護のボランティア精神のもと、日々消防活動全般に活躍している。
今回、紹介させていただく予防・広報事例は商店街を対象に実施した、名付けて『ザ・出前訓練』。商店街といえば、市民に愛され、地元に密着したかたちで繁栄を続けてきましたが、大型スーパー、コンビニエンスストアーの台頭でその数は全国的にも激減している状況の中、ここ豊中市の中・南部の地域において、商店街は多くの買物客であふれ、今もなお繁栄を続けている。
片手に消火器、片手にのぼり、胸にはタスキの出立ちの我々予防広報マンが、商店街の各店舗を一軒一軒訪問し、最近の火災の傾向を説明したり、店の人に対しマン・ツー・マンで消火器の取扱いなどを指導するのが『ザ・出前訓練』。
商店街は、店舗が連続して軒の連なった建築物で、一旦火災が発生すれば延焼・拡大の危険が大きいのですが、それぞれの店舗は小規模の個人経営が多く、商店街全体で消防訓練を企画しても参加者がなかなか集まらないのが現状です。そんな状況の商店街に、どう対応してゆくべきか?こんな考えから、待ちの訓練指導ではなく、積極的に出向く訓練指導として、予防スタッフ全員で知恵を絞り検討した結果『ザ・出前訓練』の誕生となったわけです。一昨年の秋から新企画ものとしてスタートして以来、火災予防運動中のメイン行事として定着し、今では定番的な存在となりました。
内容そのものは普通の訓練指導と差異はありませんが、そのネーミングと商店街の全店舗に訓練の出前をするという話題性で、豊中市の広報紙やコミュニティーケーブルテレビの取材を受け、広報紙掲載、テレビ放映と広く市全体を網羅したかたちの広報活動ができたと自画自賛しているところです。