利用する側の意見を聞くことが必要だと思います。私達からの『一方通行の設置指導』ではなく、使う側の意見を聞いてこそ、有効な設備となるはずです。私は立入検査に行くたびに、この設備をもっと有効に活用してもらうためには、どのような工夫をすればいいか話し合うようにします。消防訓練の時には一緒に設備を操作して、改善点を見つけます。次に、立入検査を行う事業所からだけでなく、お年寄りや子供達など、多くの入からの意見を取り入れる窓口として、消防の『インフォメーション一一九』を作るのです。この窓口を通して、お年寄りにとって使いやすい設備や、子供達のアイディアを生かした未来の設備を発案してもらうのです。そして、それらの意見を消防が行政に反映させ、使う側と消防側の利点を生かした設備を設置していけば良いのです。
たとえば、今回の誘導灯。通路の誘導灯だけでなく、避難口の誘導灯も床に設置するのはどうでしょうか?高い位置だけでなく低い位置にも付けるのです。これなら、腰をかがめた姿勢でも、お年寄りや小さな子供達の視線からも見えます。このように、利用者にとって使いやすい設備なら、消防設備に対する理解や関心が深まり、より一層の火災予防につながります。それが、消防設備の最大の意味だと考えます。
私達を火災から守ってくれる消防設備。「理解している」と「していない」とでは、大きな違いがあります。ならば理解してもらいましょう。意味をわかってもらいましょう。私は呼び掛けます。『設備はただの機械ではありません。消防設備はあなたの意見をそのまま形にした、あなた自身なのです。』
優秀賞
内山 貴之 北海道支部代表
「ともに生きる!!」
私は、平成八年に函館消防の消防士を拝命し、北海道消防学校初任教育の学生として派遣されました。その教育期間中に、全国知的障害者スポーツ大会「ゆうあいぴっく北海道大会」に消防学校生一六四名全員がボランティア研修として参加することになり、「面倒くさいなー」「消防と何の関係があるんだ」と思いながら、渋々大会会場へ向かったのです。私は、選手を待機場所からスタートラインまで誘導する役目を任され、初めて接する知的障害者への驚きと違和感を覚えながら、普通の気持ちで選手たちと接することができるだろうか、とても不安になっていました。しかし競技が進むにつれ、選手たちはまるで「俺たちは負けないぞ、社会へ飛び出すんだ」と叫んでいるようで、私は「頑張れ」「落ち着いて」と夢中で声をかけていました。そんな中、一人の少年が笑顔で私に近寄り、身振り手振りで何かを伝えようとしていました。それは、私の声援に答えてくれていたのです。もうそこには選手たちとともに汗をかき、喜び、楽しんでいる自分がいました。特別に何かをしたわけではありません。ただ選手たちと一緒にこの大会に参加し、ごく自然に健常者である自分の心を開いただけだったのです。
これから消防士として生きていく私たち学生にとって、この感動を何かに生かしたい・・・。その答えが見つからないまま消防学校を卒業したのです。
そんな私も早く一人前になりたいと無我夢中で勤務していたある朝に、二階の寝室に寝ていた体の不自由なおじいさんが逃げ遅れ焼死するという火災に私は出動し、助けてあげられなかった悔しさと腑甲斐無さに腹が立っていました。なぜなら、私は実際に体の不自由な人達などの災害弱者が暮らしている家を訪れ、「避難しやすい場所に寝かせましょう」「カーテン、寝具は防炎製品を使いましょう」