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ス・ストーリーばかりではない。公的介護保険の導入に前後して「雨後の筍」のように設立された民間営利の在宅ケア事業者は、競争激化の結果、その後大量に倒産している。

 

変革を迫られる日本の非営利事業者

日本の公的介護保険は、介護サービス事業にかかわる非営利事業者(社会福祉法人、社会福祉協議会、生協、農協、福祉公社等)にどのような影響を与えるのだろうか。ドイツの先例を参考にすれば、非営利事業者にとって、大きな変化が予想されるのは在宅ケアである。わが国でもドイツ同様、在宅ケア分野に多数の民間営利事業者の参入が予想される。

現在、公民介護サービス間には大きな価格差があるが、公的介護保険下では公民を問わず同一価格(介護報酬)となる。また現在の措置制度の下では事業者の選択は不可能だが、介護保険ではどの事業者を選ぶかは利用者の選択に任されることになる。これらはいずれも、競争原理の導入を促進する要因となる。

こうした中、非営利事業者は、営利事業者からの大きな競争圧力に直面するだろう。たとえば措置制度の下で安定的に顧客を紹介されてきた事業者も、今後は利用者に選択されない限り生き残りはむずかしい。特に公的介護保険下では、価格ではなく品質の競争となるため、二四時間巡回型介護などにも対応できる柔軟な雇用・管理体制を持ちやすい営利事業者は、非営利事業者にとって大きな脅威となる。

いずれにせよ、在宅介護サービス事業を展開する非営利団体は、二〇〇〇年四月の公的介護保険導入後は、好むと好まざるとにかかわらず、市場競争の渦中に投げ込まれることは避けがたい。公的介護保険制度を活かして事業を継続・拡大していくためには、独自のサービス領域(ニッチ)を確立するか、あるいはサービスの内容や品質を高めて、市場競争力を強化する必要があることは間違いないだろう。

 

 

 

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