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く有償ボランティアでした。施設看護から手を引き、スタッフをそろえて本格的に在宅看護の仕事をやり出してからは、働く自分たちの生活を守りながら、療養者にも価値のある看護を提供したいと考え、訪問看護の中身を徹底的に分析して、必要な費用をはじき出していきました。

そんな中で、同じ時間を使って教育を受けたスタッフたちの仕事ぶりに対し、看護を受けている患者さんや家族から「この程度の看護なのに料金が高すぎる」「これほど行き届いた看護なのに安すぎる」などとさまざまな評価が出てきました。私は、これこそ真剣に在宅看護を受けたいと願っている人たちの看護に対する正直な評価だと思いました。私たちが提供する看護が、どのような認められ方をするのか、果たしてどのくらいの価値があるのか。国家資格を持った看護婦が行う看護が、正しく評価されるようになるためには、常に金額に見合った質と量を要求される"買っていただく"看護に挑戦しなければならない、と考えるようになったんです。

 

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オフィスにて。言葉の端々から在宅看護への情熱がほとばしる。

 

「看護の原点を模索したい」-。こんな思いも、在宅看護に駆り立てられた理由だとお聞きしました。

私の子供が小さいころ喘息(ぜんそく)で、夜中にしょっちゅう起きて苦しんでいました。そんな時、看護婦としてではない母親としての私もなぜか一緒に苦しくなってきてね。子育てをする中で、母親って大変だなあと思いながら、母親の子供に対する思いこそ看護に相通じるものがあるってすごく感じたんです。看護の原点は母と子の関係にあるって。そして、その母と子の関係が紡ぎ出されていく場は家なんです。だから「家に入らずして何の看護ができるんだ」と。そんな気持ちに強く動かされて、私は在宅看護の道に入りました。

 

 

 

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