ICUの婦長をしていたときに出会った患者さんの家族のひと言でした。「助けてください」。電話の向こうで泣いていました。患者さんは五〇代の女性で、意識がまったくなく、鼻、口、尿道に管が入った状態。一般病棟に三年ほど入院したあと、どこの施設にも引き取ってもらえず、自宅で家族が世話をしなければならない状況に追い込まれていたんです。
いつでも、どこでも、望む人すべてに必要な看護をしてさしあげたい。こう考えていた私は、勤務時間外に主治医の指示を受けながら、ボランティアの看護婦としてその家庭を訪問するようになったんです。在宅看護に惹(ひ)かれていったのは、それからです。
ボランティアで訪問看護をしていたのは三年間でしたが、初めの一年は無料で、あとの二年間は訪問先の家族が決めた料金をいただ