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子供に学ぶ高齢者との自然のふれあい

堀田 ところで、うちの財団ではふれあいボランティアを推進していますが、お母様を介護され、特養でも働いておられたご経験から、ふれあう基本といいますか、気持ちなどをアドバイスいただけますか?

安田 ひとつ挙げるとすれば「叱るよりほめる」。これが基本でしょう。子供の教育でもいわれていますが、お年寄りもまさにそうです。特養の職員でさえちょっと油断していると、相手を変えようとします。お年寄りの自己決定を促すような聞き方ができる職員と、そうじゃない職員。こうしてください、こうしないでくださいという命令や禁止口調はできる限りやめる。でないとお年寄りが心を開いてくれません。

 

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堀田 本当にそうですね。相手の存在、気持ちを尊重することがまず基本であって、たとえぼけていたとしても、本人の意思をできる限り生かしてあげるよと、そういう姿勢は相手に自然に伝わるんですね。その点では、かえって子供のほうが自然に高齢者の方を受け入れていますね。

安田 (うなずきながら)ぼくの子供はいわゆる偏差値はそんなに高くないんですが、ぼけてきたお袋とも本当に自然に接してたんですよ。ある時、夏の夜にお袋が「明けましておめでとうございます」と言ってきた。ぼくなんか、口に出したらまずいなと思ってがまんはしますが、「なんなんだ」と複雑な気持ちになるわけです。でも子供は自然に「おばあちゃん、おめでとう。お年玉は?」と言えるんですね。自分が言えないことを子供が言える。それも学力も特段高くない普通の子が。よく受容という言葉で専門的にいわれますねそのままを受け入れなさいと。子供は学ばなくともわかってるんです。

 

 

 

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