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ずしも感謝の声だけが上がっているわけではないのだから、残念なことだ。よくあるボランティア団体同士の誹謗中傷が、ここでも数多く耳に入ってきた。共に震災をくぐり抜けた被災地神戸をもってしても"勢力争い"を拭い去ることはできないのか。そしてこれも残念ながらよくあることだが、ボランティア活動と称しながら政治や宗教活動を展開しようとする集団が入り乱れ、仮設住民の人々は少なからず辟易しているという人もいる。果たして誰が"本当の"ボランティア支援者なのかと-。

 

行政主導型社会から市民社会への移行に望まれること

確かに水面下では、想像以上に様々な噂が飛び交っていた。日々の必死の生活の中で他人の動きが気になるのは、致し方のないことかもしれない。しかし、他人への好み、あるいは偏った特定の立場の意見だけを頼りに、誹謗中傷を喧伝するだけでは現実には何も解決しない。

市民活動と行政支援のあり方という点から考えるなら、市民団体の側は「金は出しても口を出すな」が望ましい。使途の指定が細かすぎれば活動が柔軟に行えず硬直化する。また申請や報告などに煩雑な手間が要求されれば、ぎりぎりの人手でやっている草の根団体は悲鳴をあげるだろう。しかし一方、そうした活動と関わりのない人にすれば、元手は自分たちが納めた大切な税金であり、一円たりとも無駄に活用させたくないと思うのも、また心情だ。日本人の意識の中には少なからず行政依存の意識が残っているといえる。市民活動に対する認識は、行政はもちろん市民自身も欧米に比べてまだまだ低い。行政主導型の従来の社会から脱却し、真の市民主導の社会をめざすために、行政支援と市民活動のあり方はどのようにあればよいのか。そうした過渡期に起こる数々の問題が、ここ神戸に凝縮されている。緩やかに、自由に任せれば悪用する人がより出てくる可能性は否定できない。ならば、市民の自由裁量もなく行政ががっちり管理した形を望むのか-。

まだ改善点は多いがNPO法も成立した。行政のシステムはもちろんだが、それを左右するのは活動団体、活動者のモラルであり、一方で活動を見守る市民の側の意識である。今号をプロローグとして次号ではさらにこのポイントにしぼり、それぞれの立場から、行政支援と市民活動について読者の皆様と共に考えてみたい。(続く)

 

 

 

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