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に、ボランティアを標榜して住民を煽動するあやしげな団体も少なくない」と語る。寄付物資の横流しや、仮設の又貸し(有料)などが横行し、不信感を持った住民が自治会離れをした例は少なくないともいう。県の担当者も、「噂の域ではあるが、いろいろと話は聞こえてきます」としながらも、一方で噂の中には誤解によるものが多いのではとも指摘する。「はっきりと証拠があればともかく、自治会費などと共通の通帳でお金を出し入れしたりしていると、住民の目から見た場合、不明朗な処理と映ることもあるようです。そうした場合は、通帳を分離し、さらに会計報告をきちんと出して説明し誤解を解くよう運営団体などを指導しています」と語る。また、仕組み的にも行政としては補助金も数回に分けて支払うなど、資金の有効活用と不正支出の防止に工夫を凝らしているという。

実際のところ、六月から七月にかけて行った取材を通じて、確かにさまざまな"噂"が聞こえてはきた。「某引っ越しボランティアは、仕事を宅配業者に委託して、リベートをもらって何もしていない。儲けようという意図が見え見え。他の団体の営利事業とどこが違うのか?」

「ろくに活動していないボランティア団体に破格の助成金がついたと聞いた。銀行が貸し渋る不況の時代、ボランティアはええなあ」

「あるボランティア団体は、調査と称して仮設を巡回訪問しているが、苦情や要望なども聞きっぱなしで、他のボランティア団体や仮設住民からの苦情が山積している。政治活動のための名簿づくりに利用しているのではないか」

根拠のある噂、逆に好みとしか思えない一方的な中傷などさまざまだった。金銭的なことに対する噂が確かに水面下で飛び交っている。田中康夫氏や同氏がかかわっている運動についても、無責任な噂がいくつか聞かれる。

こうした噂の背景には、ままならない復興後の生活や将来への金銭的な不安があるのは事実だろう。ポートアイランドのある仮設では、先に触れた仮設自治会の会計担当者が補助金を横領し逮捕されたという事件があったが、この事件では、犯人よりも会計をずさんにしていた自治会長に世間の非難が集まった。「もし自分がその立場だったら、同じことをしていたかもしれない」という切実な感想が後日多く上がったという。

未曾有の震災に対し、行政の支援は決して十分ではない。しかし住民が要求するすべてを公的資金でまかなうことも現実には到底不可能であろう。そこに地域住民同士の助け合い、ボランティア活動による民間支援の存在価値が生まれてくる。しかしながら、せっかくのボランティア活動に対しても、被災地神戸では必

 

 

 

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