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事実無限の上納金疑惑

問題の発言の主、作家・田中康夫氏によれば、堀田力率いる「さわやか財団」(原文呼称のまま)は、仮設住宅につくられている「ふれあいセンター」への運営補助金を、「息のかかった専従ボランティア」を通じて「1000万円ぐらい」不当に上納させている「疑惑」があるという。対談の相手、京都大学助教授の浅田彰氏は、この発言を受けて、その疑惑を岡光元厚生省次官になぞらえている。また財団の抗議を知って、田中氏は続く別の号で「上納疑惑は、はっきりとした裏が取れないので」撤回して謝るとしたが、「真っ当なボランティアの間で評判が悪いことは事実」とコメントし、「堀田力率いるさわやか福祉財団は、連合系の落選地元議員と密接な関係を構築して、有給ボランティアとして仮設住宅に送り込んでいる」と批判している。

こうした疑惑は全く事実無根であることは本誌先月号コラムではっきりと述べた。しかし、もし現地でふれあいセンターに関する何らかの疑惑が生じているのなら、本誌としても調べてみる価値はある。なぜならそこに行政支援と市民活動のあり方という大きな主題が潜んでいるからである。いったいこの疑惑の正体は何なのか。見えない影を追って取材をはじめることにした。

まず、ふれあいセンターについて説明しよう。

ふれあいセンターとは、簡単にいえば、仮設住宅で暮らす人々のコミュニティー活動の場。常設の集会所としてその敷地内に設置され、仮設住宅に住む高齢者等にふれあい交流を通じて心身のケアを行う。またコミュニティー形成の場や、ボランティア活動の拠点としても活用(※)され、高齢者等の自立生活を支援するのが目的だ。主な資金源は補助金で、運営は民間にゆだねられ、仮設の自治会などが中心となっている。兵庫県の主導で、震災の年の平成七年半ばには計画が実行に移された。

県によれば、ふれあいセンターの補助金総額は、平成七年度当初から平成一〇年度これまでの累計で約二六億円。確かに俎上にのぼるだけのことはあるまとまった額である。うち設置費用に対する補助金が約一六億円、管理及び運営費補助として総額で約一〇億円。ちなみに仮設住宅が統廃合されてきた平成一〇年度の単年度予算は、取材時で設置補助金約一億一千万円、管理及び運営補助金約一億六千万円となっている(兵庫県長寿社会課)。

※仮設によっては、この他、行政が行う活動をサポートする拠点としても利用されるなど、幅広い用途で活用されていた。

 

 

 

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