日本財団 図書館


住民参加はこうやって -三鷹市の経験

三鷹市はこの二〇年来「市民会議」という方式の住民参加を行ってきた。これは、基本構想や基本計画、そして地域福祉計画(老人保健福祉計画を含む)のようにその下に策定される各個別計画の検討に当たって、庁内で作られた素案の討論を市民会議にお願いし、その意見を取り込んで最終的に計画を確定するという手法である。

「市民会議は、市民の自主的・主体的な組織であって、市政に対する市民参加のための組織である。」(市民会議会則)と自ら位置付ける市民会議の特色は、公募委員の参加と市民委員相互の討論にある。行政職員は事務局として一段下がったところに机を並べ、質問に答えたり資料要求に応える以外、自分たちの意見はいわない。通常よくある「計画策定委員会」は、住民代表とともに行政の幹部職員も委員としてテーブルを囲み、一緒に議論するが、これはいわば見せかけの民主主義に過ぎない。情報と権限を一手に握る行政職員に対して、無手勝流の住民が論争に勝てるわけがない。

市民会議はこうして市民委員相互の議論を積み重ねて、それを「意見書」にまとめて市長に提出する。市長は、提出された意見をできるだけ取り込むことを原則として、個々の意見に回答を付し、素案のどこを市民会議意見に沿って修正したのかを明確にして市民会議に戻し、そして計画が確定されるのである。

三鷹市の市民会議方式を支えている要素は四つある。一つは、原則として「金は出すけど口は出さない」として地域で二〇数年続けてきたコミュニティ行政。その成熟の中で「住民」が「市民」へと成長してきていること。二つめに、職員参加によって育った、企画力と政策研究意欲のある職員の存在。そして三つめに、市民と職員をそのように育て、市民参加を地方自治の根幹と認識して自らの政治信条としてきた歴代市長。さらに四つめとして、そうしたこと全ての良き理解者としてあり、さらに一層の市民参加の促進を常に主張する市議会の理解と支持の存在である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION