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在宅医療をすすめるうえでは、医療機関を結ぶシステムづくりが必要

英医師が開業する『曙橋内科クリニック』は、都営地下鉄線曙橋駅から、歩いて五分ほどのマンションの一室にある。しかし、表にはもちろん、玄関ドアにも看板は出ておらず、ここがクリニックだとは、外からはまるでわからない。中に入っても、診察室もなければ医療器具も見えない。白衣を着ている者とて一人としていない。ただ、コンピュータだけが並ぶ、さながらビジネスオフィスのような空間だ。

現在ここで働くスタッフは、英医師のほか看護婦が四名、ソーシャルワーカーが二名、事務員が四名と、非常勤では医師が五名、理学療法土が一名。患者は、新宿区内を中心に九つぐらいの区にわたっており、合計で一五〇名ほどを診ているという。

「開業当初はぼくと事務員一人だけでしたが、患者さんがお困りのことは診療だけじゃない。ただ、診療をくり返しているだけでは、在宅での生活は支えられないんですね。だから訪問看護的ニーズがある人には看護婦に、リハビリ的ニーズがある人には理学療法士に、福祉的なニーズがある人にはソーシャルワーカーに行ってもらえるよう、少しずつ、人員を拡充してきました。もっとも、今はまだ二四時間対応はぼく一人でやっていますがね」

こうして話を聞いている間にも、患者さんからの電話が、次から次へと入ってくる。すでに時刻は夜八時を回っている。気が休まる暇がありませんね。そんな問いかけに対し、「確かに、在宅医療は家族にとってだけでなく、医療従事者にとって負担の大きい医療形態ではあります」と英医師。

 

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まるでオフィスのような体裁のクリニック

 

「二四時間三六五日体制を、個人のクリニックが独自に行っていくことには限界がある。たとえば、現実問題として、もし今、ぼくが倒れたら、患者さんは宙に浮いてしまいますよね。でも、医療というの

 

 

 

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