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い地域では家族介護指向が強かったこと、介護サービスの供給量が不足していたことなどが要因だと思われる。

調査によれば、サービスの供給量と介護認定の基準は密接に関係している。介護サービスの供給量が少ない地域では介護認定の基準が厳しく、却下率が高い。近年では、現金給付と現物給付の組み合わせ型が増えているという。その理由は、介護保険の導入によって介護サービスの供給が増え、また外部化が次第に定着してきたためであろう。

 

日本の介護保険と現金給付の議論

日本の介護保険でも、現金給付は主要な検討課題の一つであった。例えば、老人保健福祉審議会(以下、老健審)の中間報告にみられる現金給付に積極的な意見には、1] 高齢者とその家族の選択の自由を尊重するべきだ、2] 外部の介護サービスを利用している人との公平性を考えるべきである、などがあった。小さな町村の首長の間では、「介護サービスの需要を満たせない」という不安から現金給付に積極的な意見が多かった。

現金給付に慎重な意見には、1] 現金を受け取ることにより家族に介護が固定化する、2] 多くの人が現金給付を選択すると現物サービスが拡大しなくなるなどがあった。女性団体からは、「介護を今まで以上に女性に固定化することになりかねない」という反対意見が根強かった。

この議論は平行線をたどり、老健審の最終答申(一九九六年四月)では両論併記となった。その後一ケ月も経たないうちに厚生省試案(一九九六年五月)が発表された。この間に各関係団体や政治家、厚生省の間でどのような交渉や調整が行われたかはよくわからないが、「現金給付はなし」という方向性はこの段階で確定的になった。

 

(表1) ドイツの介護保険給付

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