日本財団 図書館


家族ヘルパーの選択は激減しており、一九七〇年には全国で一万八五〇〇人だった家族ヘルパーが、一九九三年には六三〇〇人となり、在宅で介護を必要とする人のわずか二%にすぎなくなった。近年では、調査に行ってもその存在をあまり耳にしない。

一九七〇年代のスウェーデンは、ホームヘルプが広く普及していく段階であった。この時期には在宅介護サービスが不足がちなこと、また家族の介護に対する責任などが要因で、市民は現金給付指向となる。しかし、介護サービスの供給が充足してくると、素人の介護より専門職による介護という現物給付の選択に向かうようである。

 

ドイツの介護保険と現金給付

ドイツでは一九九五年一月から公的介護保険が導入された。給付内容は次頁表の通りである(表1)。ドイツの介護保険は、1] 現物給付、2] 現金給付、3] 現金給付と現物給付の組み合わせの三通りの中から給付を選ぶことができる。利用者が現物給付を選択しやすいように、給付額に差をつけている。

九五年一月にドイツに調査に行き、驚いたのは、「在宅高齢者の七〜八割が現金給付を選択する」との見通しだった。AOK(ドイツ最大の疾病金庫)のチュービンゲン市(ドイツ南部)支所長のチョイリン氏は次のように語った。

「介護保険導入によって、家庭で介護することが容易になるでしょう。多くの家庭は現金給付を望むと思う」。同氏は「介護に伴う家族の経済的な不安をやわらげることができる」として介護保険を評価した。

私の印象では、ドイツの現金給付は失業対策的な意味合いが強いように思えた。介護期間の年金加算、事故に対する労働災害の適用、年間四週間の休暇取得の権利(期間中はヘルパーが派遣される)など、日本に比べて、介護者の労働基準についての議論が多い。

確かにドイツでは制度の開始当初は、現金給付の選択が約八割であった。これは失業率が高かったこと(特に女性)、特に南部のカトリックの色彩が強

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION