日本財団 図書館


六〇年代にホームヘルパーに国庫補助金が支給されるようになり、市町村は在宅福祉の拡充に本格的に取り組むようになった。この時代には「脱施設」と「家事援助」がホームヘルプの主な目標だった。

その後、八○歳以上の後期高齢者の増加とともに、身体介護に重要性が増してきた。在宅での身体介護には、食事介助やオムツ交換など、一日数回の訪間が必要となる。二四時間巡回型サービスは身体介護のニーズによって、七〇年代後半頃から広まっていった。

近年では末期ガンの患者をはじめ、終末期の患者も多くが在宅で生活している。在宅でのターミナルケアが行われ、ホームヘルパーも在宅での医療知識が求められている。

 

介護の外部化と女性の経済的自立

この五〇年にわたるホームヘルプの歴史の中で、女性の生活スタイルは大きく変わった。スウェーデンの女性の就業率は八○%を超える。そしてスウェーデンの女性就労の特徴は、保育や介護職などに集中している点にある。労働市場内での男女平等という視点に立てば、「女職場、男職場」というすみ分けがあるという問題も指摘される。

しかし、かつて女性が専業主婦として家庭内で無償で担ってきた育児や介護が外部化されて、一つの職業として確立したという点は興味深い。家庭で自分の親を介護するよりもヘルパーの資格を取り、他人の親の介護をすれば収入を得られる。女性は収入を得て、経済的自立が可能となった。女性の経済的自立が、家事の分担を含む家庭内の男女平等を進め、男女共生社会が築かれていったのである。

 

スウェーデンで家族が介護したい場合は?

「家族で介護をしたい」という強い要望があるとき、スウェーデンではどうなるのか?

スウェーデンではあくまでも現物給付が中心であるが、現金給付を受けて身内を介護することもできる。この場合"家族ヘルパー"として市に雇用されることになる。家族ヘルパーは六五歳以下が条件で、介護者が六五歳以上の場合は介護手当を受けることになる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION