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が生じる。これが「介護保険料を一本化する際の最大のネック。広域連合を実現するため、国にこの点をなんとかしてもらいたいとお願いしているんです」と北・奈井江町長は強調する。

五町一市では次のステップも考えている。要介護者の増加に備え、広域的医療連携画像診断システム構想を推進することに基本合意した。CT・X線、心電図、超音波、内視鏡画像、病理組織・病巣部画像などを広域連合地域内の病院、診療所、特別養護老人ホームなどの間でインターネットで送受信し、保健・医療・福祉を総合的・有機的に運営するための広域ネットワークをつくろうという試みだ。

こうした小さな町の大きな実験はどうして、この地域に生まれたのか?奈井江町は浦臼町との間で学校給食とごみ処理の共同運営をしてきた。浦臼町は砂川地区広域消防組合など七つの「一部事務組合」を持つなど広域連携の実績を積み上げてきた。それは過疎地が生き残るための知恵でもある。

介護保険を小さな町と市のジョイントベンチャーでやろう-この果敢な挑戦ともいえる試みをリードしてきた北良治奈井江町長の本業は酪農。高校卒業後三年間、米国のウィスコンシン州の酪農家にホームステイしながら、当地のマジソン農業大学に聴講生として通った。米国留学で得たものは「前例にこだわらず、いいことにはただちに取り組み、発想が豊かな者が勝ち残る米国の思想」だった。

町長になってからは自治体初の老人保健施設「健寿苑」をつくった。開業医が自分の患者を入院させた場合、その開業医が入院先の病院に往診できるというユニークな開放型病院も建てた。フィンランドに若い職員を派遣して北欧の高齢者福祉を町ぐるみで取り入れている。また在宅の要介護老人の個別ケアデータ管理ソフトを町内企業と共同開発した。ゆくゆくは全国に販売する福祉産業を地場産業として育てるロマンを持っている。

公的介護保険というニューウェーブは広域連合という地方分権の新制度とあいまって北海道にもう一つのフロンティアを切り開きつつある。

 

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奈井江町長・北 良治氏

 

 

 

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