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「この川の水が澄むようになったら町はおしまいです」

その頃川の流れは炭鉱の排水によって真っ黒く濁っていた。それから四半世紀。空知平野を貫く石狩川の豊かな流れからは炭塵による黒濁は消えていた。だが、その"代償"は大きかった。空知の市や町はかつてのにぎわいを失っていたのである。元炭鉱都市、歌志内市はピーク時の人口は三万人を数えたが、平成七年の国勢調査では六八六七人へと激減していた。産炭地は惨憺地になっていたのである。

それはエネルギー革命と産業構造の変革がもたらした。エネルギー源が石炭から石油に変わって炭鉱が閉山し、稲作の減反という農政の転換と農産物の自由化によって農業も衰退した。その結果、中空知地方から人口が流出、高齢者が残った。過疎化と高齢化の同時進行という典型的なパターンである。

その後到来した少子化と長寿化というもう一つの波によって歌志内市の人口は公的介護保険が実施される平成十二年には六〇〇〇人を切り、平成十七年には五〇〇〇人を割ると推計されている。この間に同市の人口に占める六五歳以上の人口の比率を表す高齢化率は、平成七年二六・二%、同十二年三三・四%、同十七年三八・六%へと急速に上昇していく。

歌志内市に近い他の町も同様だ。同市の南部に位置する奈井江(ないえ)町の人口を国勢調査でたどると、平成七年は七六六七人。最盛時の一万四五八三人(昭和四〇年)に比べ半減した。そんな中で、奈井江町の北良治町長が音頭をとって旗揚げした「中空知五町一市広域介護保険推進協議会」(北良治会長)に参加する六自治体の総人口は、平成七年国勢調査では三万五四二八人だったが、公的介護保険がスタートする平成十二年は三万二五二二人に、同十七年には二万九六七八人と、三万人の大台を割る見通しである。こうした人口減と歩調を合わせて、協議会参加地域全体の高齢化率は二四・一%、二八・四%、三一・八%と着実に上昇する。

 

 

 

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