そして、四月一二日(日)。
町の小ホールは一〇〇名もの会員と来賓で埋めつくされ、『ハートフル・みやしろ』は、無事、設立の日を迎えた。開設した事務所には交替でスタッフが詰め、普段役所の仕事がある井上さんは、休日の活動が中心の現在だが、代表としての舵取りは万全だ。
「自分が年を取ったときに、何かをしてもらえるということも大切ですが、ギブアンドテイクだけがすべてじゃない。いろんな面で人と人とのかかわりが希薄になっている反面、そういうものが重要ともいわれている時代。昔の隣組的な関係は無理でしょうが、それに代わるものをつくっていかないと、暮らしやすい町にはならない。実際、今回のことで、仕事をしているだけではなかなか知り合えない方たちと親しくなれ、私の大きな財産となりました。何か人の役に立ちたい、たとえ今は無理でもそういう気持ちでつながっていける地域。それが、人が生きていくうえで大事なものなのかなと。だから、この団体がそのひとつのきっかけになればいいなと、思っているんですよ」
設立一週間後の土曜日、さっそく井上さんは事務所当番としてやって来た。病院や保育園への送迎サービスもはじまっており、滑り出しは上々だ。
現役行政ウーマンが一市民として仲間と共に立ち上げた助け合いの組織は、行政と市民団体との新しいネットワークを予感させる。ふれあいのある新たな地域社会の実現に向けて、その第一歩は着実に踏み出された。
平成8年
10月 さわやか福祉財団主催の『在宅介護フォーラム』に参加
12月 宮代町の広報に「共にボランティアを考えませんか」との呼びかけを載せ、有志5名で、月一回の勉強会をはじめる
平成9年
6月 設立準備委員として25名が集まり、以降、設立資金のために、1人月1000円を供出
8月 町民祭でバザーを開催、23万円の純利益を上げ、設立資金の一部とする
平成10年
2月 事務所を借りる
説明会を3ケ所で開催し、会員を募る
4月12日 『ハートフル・みやしろ』発足!
埼玉県南埼玉郡宮代町に本拠地を置く『ハートフル・みやしろ』は、会員同士「困ったときはお互い様」の気持ちで、お互いができるときに、できることを少しずつ出し合って助け合うことを目的とした会員制・互助型団体。活動の内容は、買い物・掃除・洗濯・食事の用意・幼児の世話・散歩や通院の介助・話し相手などで、利用する場合は、会から1点100円のサービスチケットを購入して1時間に8点(800円)を支払い、提供する場合は1時間の活動に6点(600円)を受け取る仕組み(差額の200円は事務費に充てられる)。また、活動した時間の点数を現金で受け取らずに、将来、必要になったときにサービスで受け取る「ふれあい切符制度」(時間預託制度)も採用している。